「世界選手権疾走記録 10」 |
| 3月23日(金)
転倒(女子ショート、アイスダンスフリー) 昨日の計画通り駅への途中にあるパン屋さんでのんびり朝ごはんを食べる。パンだけではなくサラダも豊富で野菜不足になりがちの海外生活では嬉しい存在。その場のノリでベトナム風豆サラダを注文したのはいいのだが、香菜がきつくて食が進まない。いかん、体調が悪くて口が悪くなっている。 新聞のスポーツ面のトップにはキス&クライから引き上げていく時と思われるエルビスとエルビスのお母さんの写真。スケーターと家族の関係についてのコラムがあり、「子供を一番ケアできるのは親」というエルビスのお母さんのコメントが。 Kがおもしろい夢を見たそうだ。 エルビスが公開練習の時にファンからもらったバースデーケーキ(これは昨日あった実話)を自分の分だけさっさと切り分け、「太るとまずいから俺はちょっとだけね。あと君らで食べて」と女性3人組にお裾分け。しかし女性陣には不評でサレーが「ずるい、1人だけいいカッコしてあたし達にケーキ押しつけて!!」と怒っていたらしい。 ということは残りの女性2人はシェリーンとジェニファーだろう。でもこの3人がそろえばケーキを押しつけられて怒るというよりは、ケーキを切っているエルビスにああ切ってこう切ってと注文つけそう、いやエルビスを押しのけて3人できゃいきゃい言いながらケーキを切り分けてそうと話をふくらませて遊ぶ。 ウォームアップでコーチと一緒にいる時の思音ちゃんの表情が今日は険しい。「加油、思音!」いかん、喉が痛くて声が出ない。 予選といい中国勢の割に衣装の素材が凝っている彼女、実はこの衣装は半袖なのだ。何をするかあっさりわかる衣装だが、メディアインフォメーションを見直すと「Egyptian
version of Music by Wolfgang Amadeus Mozart」。なんでもエジプト風にアレンジすればいいというものではないと思うが…。ショートは踊りのパートが入れにくい気がするが、お約束の独特の手足の動きがところどころに入っている。しかし本当にトリプルが入らない。そして終盤にスパイラルなのだが、あの…思音ちゃん……(^^;) 「エジプシャン」な表現でやっていると思うのだが、ジャッジに「脚が伸びていないスパイラル」と思われて評価が下がらないだろうか。予選できれいなのを見ているだけにわざわざ曲げるのはもったいない気がする。 でも彼女のショートとフリーの両方を見られてうれしかった。来シーズンはジャンプを戻してね。 「この子かわいい」とKのチェックが入った台湾のカリーナちゃん。うまくいけばフリーに行けるかもしれない。ところが今日は表情も動きも硬くなっていて、まさかのジャンプ全ミス。 それでもスパイラルシークエンスの一つがこれ。あら、やわらかい〜〜ビールマンスピンもやっていたと思う。結局思音ちゃんより下になってしまった。 アニー・ベルマーレも第一グループ、やっぱり予選通るかどうかやばかったのか。しかしジャンプが得意な彼女、ここでは余裕のノーミスだった。よかった…のだが彼女の場合は第一グループにいること自体に不満が残る。フリーでもいい演技が見たい。行くよね? ソルダトワが第二グループということにはもっと驚いた。A組の第一滑走でミスが多かったのは覚えていたが…しかし彼女も実力発揮のノーミスでキス&クライに向かう時にはヘルシンキを思い出す久しぶりの笑顔。あなたもこのグループにいられては困る。 予選でいい演技をした韓国のBit-Na(ビトナ)ちゃんはなんと第三グループでの滑走。うまくいけば20位を切るかもしれない。今回は黒の長袖の衣装、フリーとは変えてしっとりしたプログラムを滑るのだろう。 終わった後に彼女を見たことがないはずのKを相手に「うまくなった!」と連発してしまったキエルクガード(デンマーク)。去年は見えなかった個性がやっと見えた。取りたてて派手な振付でもスピンのような一発技も持っているわけではないが、じわじわ魅力が伝わってくるスケーティングと演技。なるほど「ブロンド・クワン」と評されるわけだ。 会場の反応もよくて、点数には大きなブーイング。ジャンプの難度が低いので仕方がないことではあるが、観客によるこういうジャッジもあっていいだろう。 ジェニファーはショートでもジャンプを2つミスし、終わった後の拍手に応えきれない落ち込みぶり。しかしキス&クライのそばの関係者席から花束を差し出している子供達に気がつくとほほえんで受け取りに行った。やさしいね。 さてBit-Naちゃんは何を滑るのだろう?わくわくしながら待っていると、流れてきたのは痛切なバイオリンのメロディー、シンドラーのリスト。若いのに(15歳)渋い曲を……。 しかも途中で四季の冬でたたたみかける。さっぱりしたスタイルの彼女、予選のようなシンプルで明るい曲だと映えるのだがここまでこってり暗い曲だと無機質に見えてしまう。音を無視しているわけではないのだが、さすがに無理があった。ジャンプを2つミスしたので余計にそう感じられたのだろう。 5年たったらまた挑戦してね。 第四グループのウォームアップはすぐりんの気合がすごかった。斜めのラインを完全に独占して何度も何度もルッツを跳んだりタイミングを取ったりしている。4、5回跳んだのではないだろうか。フリップとダブルアクセルは1回ずつ。 すぐりんから視線を外したこの時、マリニナのフリップが特徴のあるものだということに気がついた。トウのつき方がものすごく軽い。角度によってはトウをついたことがわからなくてサルコウに見えてしまうのではないだろうか。なるほど実況中継でフリップに「トウサルコウとも呼ばれています」というコメントがつくわけだ…と知識が増えるのはいいのだが、ジャッジにサルコウと思われて点数が低くなるなんてことは…それはないか。 そしてそのすぐりん、ウォームアップで何度も余裕で跳んでいたルッツは本番で高さも流れもすごいコンビネーション!このコンビネーションもすごかったのだが、これに対する会場の盛り上がりがすごかった。この盛り上がりは上位選手と遜色ないだろう。またこの後もスピードが落ちない。これはノーミスで終われば会場総立ちになるのはまちがいない。いやこのすぐりんだと絶対ノーミスだ。その瞬間が待ち遠しい、早く立ちたい。 この時の彼女は表情が爆笑寸前、楽しくて楽しくてしかもエネルギーがあり余っていて、旭川で感じたひらひら飛び回る小鳥というよりはバサバサはしゃぎ回る一歩手前に見える。すっかりしっとりしたプログラム中心になっている彼女だが、一回アップテンポの元気なプログラムをやってみるのもいいかもしれない。 これだけノリまくっている演技だとこの会場では演技が終わる前からスタンディングオベーションに入りだす。見えないってば!でも許す、日本人としてこれは嬉しいし、それだけ演技で魅せられる存在になったのだ。やったねすぐりん! ブティルスカヤはまだ予選の不調を引きずっているよう。2シーズンこのプログラムを見ているし、生でなら今回で5回目。ファイナルのエキシビでは曲と一緒に歌っているような演技だったのに、こんなにガチガチなのを見たのは初めてだ。 それでもジャンプを全部こらえてなんとかノーミスだったが、心臓に悪い! 爆笑寸前の表情といえばもう1人、ミシェル。ミシェルのショートといえば抑えて抑えてじわじわ来て、最後のスパイラルでほうっと魅せられるパターンが多いのだが、この時は始めの振り付けからバシバシにオーラを発していた。 心身が充実した状態というのはこういうことなのかと思わされる。スイッチが入ったミシェルはやっぱり強い。 しかしそのミシェルをもねじ伏せてしまうのが今のスルツカヤ。シャン、シャンとリズムを取っているようなこの曲はまた一つ彼女の別の面を見せてくれた。ミシェルを上回ったのはコンビネーションのセカンドジャンプがループということだけではないと思う。 セカンドジャンプのループをフリーでは見ていたが、ヒューズはショートでもルッツ+ループ!世界選手権へ向けてバージョンアップ、と言いたい所だが…サラちゃん〜〜 私がわかるくらいなんだから相当やばいと思うよ〜〜(^^;) 人間、髪をアップにして体重を少し絞るとここまで変わるものなのだろうか?ニコディノフってこんなに流れがきれいな人だったのね!彼女の魅力が前面に出てきてやっと実力がわかった。サラちゃんより上でもいいんじゃない?と思っていたらスルツカヤ、ミシェルに続くショート、総合共に3位!よしよし。 それにしても。 上位、堅い!いや堅いから上位なのだが。 すぐりんがあれだけよかったのでてっきり最終グループ入りだと思っていたのだが、そこまでは甘くはなかったか。まさかブティルスカヤでぎりぎり最終グループ入りだとは思わなかった。こうなってみると予選はやはり侮れない。 どうも女子ショートでテンションを上げすぎたようで、反動で一気に疲れて寒さが身にしみてくる。この会場は比較的暖かいのだが、一種目いるとさすがに冷えるのだ。おかげで休憩時間にスターバックスへコーヒーやホットチョコレートを買いに行くのが習慣になった。安くはないが、スモールサイズでも結構量があるので一回買えば一種目もつのがありがたい。 スターバックスでホットチョコレートを買って通路の方を向くと「Hi, ニースで会ったの覚えてる?」とアイスを手にえらくにこやかに体格のいい男性が話しかけてきた。へ、誰…?っておっちゃん!おっちゃんだよ!!(彼についてはこちら) 実は私のすぐ近くの席にいたそう。どこに座っていたのかを訊いたあと(昨日しっかり見つけられていた^^;)、「イタリアとフランスのマッチレースだね。イタリアかな」「私もそう思います」となぜか去年に続いて予想屋モード。アイスダンスだからできることだな(^^;) 都築さん達は第一滑走。思音ちゃんも第二滑走だったし、ついてない時はとことんついていないものである。(いや本人達のつながりはないが) スケートアメリカの放映で初めて見た時に、今まで見たことがない情熱的な白鳥にぞくぞくして仕上がりを楽しみにしていた白鳥の湖。しかし滑り始めてからこのフリーの重大な欠点に気がついてしまった。都築さんのお顔が見えないのお(泣)! 王冠から解き放ったさらさらのお髪(おぐし)も呪いから逃れようとしてでもできなくて苦しんでいる姿もお美しいのだが、そのお髪と体を反らせる姿ゆえにお顔が見えないのだ。これは演技として大きなマイナスだと思う。テレビ放映でも旭川でも気がつかなかったのに、なぜ(泣)! 結局都築さん達は観客の共感を得ることができなかった。 都築さん達が終わって一気に疲れてしまい、このグループの他の演技が全く記憶にない。ホットチョコレートを飲んだばかりなのに寒い。そして眠い。これはまずい。 こういう時には変に粘るより暖かい所で少し寝て眠気を覚ました方がいい。席を離れて売店近くの適当なテーブルに座り、荷物を枕にして突っ伏すと顔が机に貼りついて離れなくなった。 あら―――――!?(ルパン三世調で)ちょっとこの体勢首が痛いんだけど〜〜〜 「T、生きてるか?」 5分くらいしかたっていなかったような気がするが、Kの声で起きるとよりきさんもいるし何やら周りがざわめいている。「しんでる〜もう製氷〜〜?」とテーブルにつっぷしたまま動けない私に「だいじょうぶですか〜、医務室行きます?」とよりきさん。 いむしつ? そうか、わたしいむしついくほどじゅうしょうなんだわ〜というのといむしつだったらあたたかいところでおもうぞんぶんねられるという思いの他に、医務室へ行くということはその中、舞台裏までレポートできてしまうのだ、すごーいわたしせかいせんしゅけんきわめたわ〜〜〜という思いが1/5ぐらいあったことを白状しておく。 (すみませんこういう奴です^^;) 幸い医務室はすぐ近くにあった。意外に狭くて6畳もない。簡易ベッドが二つあってそのうち一つは先客がいる。貧血を起こしたわけではないので何が異状なのか説明がつかない。気分が悪いのでしばらく寝かせてほしいと頼むと「15分だけね。横になってもいいけど眠り込まないでね。」と係員。 詰めている3人の係員はリンクが映っているモニターを見ている。試合を見ているなんてのんびりしているなあ。でもラッキー、これでフリーダンスみのがさずにすむわ〜ってちがう、わたしねにきたんだろうが。それにここは本物の医務室なのだ。リンク上でトラブルが起こったらすぐに対応できるようにモニターしているのだろう。 じゃあ選手がはこびこまれたらベッドゆずらなきゃ〜〜〜〜 あ〜ゴッドファーザーの喪のベールがなくなってる〜〜〜〜〜 第三グループが終わったのかTime is up。「ホテルに帰るならタクシー呼ぶけど」というのを断って再び売店近くのテーブルでモニターに顔を向けた状態でうとうとする。 あ〜ガリットさんがブンブン振り回されてる〜〜〜 というわけでなんとか復活。最終グループに間に合った。 席に戻ると「あ、戻ってきた!」「大丈夫?」周りの席の人達が次々に声をかけてくれる。ちょっとなんで知ってるの、何か言ったのか?>K。 5日間も同じ席に座っていれば一種の連帯感は生まれるものだが、私の席の周りの人達は本当に温かい。すみませんなんとか生きてます(^^;) しかし最終グループのウォームアップだというのに会場の空気とシンクロしきれない。やっぱり試合は始めから最後までずっと通して見ないと意味がない。第一グループからじわじわテンションを上げていくその工程がいいのだとこの時気がついた。長丁場の試合は体調のキープが本当に課題になる。 ドロビアツコ組の衣装が薄紫色になっている。去年のフリーの色違い、プログラムを戻すのだろう。テレビ放映で「ガリットさん死んじゃうよ!」と思ったあのチャイト組をかわすにはそうした方が正解かもしれない。 テンションが上がり切らない理由がもう一つあった。優勝を争うアニシナ組とフサポリ組の今シーズンのプログラムがどちらも物足りないのだ。グランプリシリーズからファイナルへ試合を重ねるほどに印象が悪くなっている。 去年のプログラムは両方とも好きだったのだが…。 第三滑走のロバチェワ組、音楽はよく聞くクラシックをアレンジしたものだが、衣装や振り付けとのつながりが感じられなくて抽象的でわかりにくいプログラム。 しかし今年の彼女達には何かふっ切れたような勢いが感じられる。スピードがあるし、終盤にこれでもか、これでもかとステップを繰り出す。これはすごい!出来という点では先の二組より上だと思う。 それにしても全体的に点数が低くないだろうか。最終グループだというのに5.9があまりないような気がする。 ドロビアツコ組はやはり去年と同じプログラムだった。何度見ても情熱的でパワフルでこの二人に本当に合っている。2シーズン前は違うスタイルだったのだが、もうこの系統がすっかりスタイルになっているような気がする。 そして最終滑走はシェリーン達。 今シーズンからタラソワコーチの元に入った二人。どうなることかと内心心配していたのだが、さすがタラソワさん。シェリーンに目立つ振り付けだが、一年前に手術をしたということが嘘に思える。カナダでこの曲を滑ると国歌を滑っているようなインパクトを与えるだろう。全てが緻密に計算し尽くされたプログラムという気がする。 だが今回は気合いが入りすぎて空回りしたのではないだろうか…。 体調も演技も結果も何もかもが気分を盛り下げさせるエンディング。 さあカナダのスケート観戦で怖れていた事態がやってきた。 「So disappointing!」と一言残して階段を上っていく人がいる。どんどん空席が増えていく。トイレ休憩ではあるまい。表彰台を見ずに帰るのか、Skatefestでエルビスのインタビューを見るためでもあるまい。 ふん。帰れ帰れ、居残ったってブーイングを飛ばすのが関の山だ。甲子園球場で優勝を決めたヤクルトに「帰れ!帰れ!」とコールし続けた阪神ファンを見て同じ関西人であることを恥に感じた、あの居たたまれなさを感じずにすんでせいせいする。私はエルビスのファンであってカナダ選手にはそのつながりで情が移っている程度だが、それでもカナダ選手のファンである事を恥に思うような展開はまっぴらだ。 結果に納得できないことを行動で示すならそれもいいだろう。ブーイングを飛ばして表彰式を汚すよりもスマートな抗議行動とも言える。 表彰式は結果を認めて勝者を称える気持ちのある人だけが見守ればいい。 ぼんやりしていて表彰式の間のことは覚えていない。ウィニングランの時にいつの間にか隣の席に大きなロシア国旗を持った人が来ていた。おお、やるじゃん! 見過ごすことなかれ、北米の試合にだって気合いの入ったロシアサポーターはいるのだ。私の席の前に選手が集まってきて観客による記念撮影の場になっているのでそれを狙ってきたのだろう。大いにアピールするべし! アベルブッフとマルガリオにだっただろうか、リンクサイドから選手にハグしていた人もいた。今までで一番観客と選手の距離が近かった写真撮影の光景だったと思う。 最後までリンクに残っていたのは確かロバチェワ組、一番嬉しそうだったのも彼女達。よかったね。 今回の世界選手権は試合と同時進行でSkatefestというイベントがあり、展示があったりインタビューや試合直後のメダリストを呼んでちょっとしたイベントもある。今日はこれからエルビスのインタビューがあるらしい。 見に行きたくないわけではないが、すぐ近くのYWCAでタクシーを待っている間ソファーに座っていることもできずに寝転んでいる状態では行っても人込みの中で倒れるのが関の山である。 ぶうさんよりきさん、あとで話聞かせてくださいね〜〜〜〜〜(ばたっ) ぎゃ―、コンタクト片一方流した――!! 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