ESLプログラムの落とし穴〔3〕


学校での英語学習が思うように伸びない場合、子供のやる気や努力の問題だけが原因ではなく、〔2〕でも触れたように教師の質やカリキュラムの問題であることも多いので、家庭側でも子供を責める前にいったい子供がどんな授業を受けているのか知る必要があると思います。普通学級はもちろん、ESLでの教育経験もあり、スクールサイコロジストとしてバイリンガルの子供達の学習過程を30年以上見てきたDr.オーガストと話す機会がありましたので、Dr.オーガストの経験に基づいた見方を交えながらカリキュラムについて触れみたいと思います。

ESLのクラスというのは、クラスを受ける子供達のそれまでの英語学習経験や、学区によっては、受講する生徒の年齢や学年もバラバラであり、1つのクラスとして教育内容や教育方法を統一するのが難しい科目です。ですから、実際、しっかりとしたカリキュラムを組まずに、“他の授業で出て来たから”と行き当たりばったりで教えている学校も少なくないようです。普通の国語、或いは、他の授業を見てもわかる通り、母国語として言葉を学んでいく場合でも、『単元』というものがあり、母国語を習得するにも単元ごとに子供達が必要学習内容をマスターしていけるようにデザインされているものなのです。応用が必要な大学や大学院でさえも、課題内容に自由が与えられてはいるものの、毎レッスンの講義内容がシラバスに予め載っているほどカリキュラムはしっかり組まれているものであり、カリキュラムというのは私達の学習活動には欠かせない必要条件だと言えます。…にもかかわらず、現地校生活の基本であり学習活動に必要な道具となる肝心な英語学習にしっかりとしたカリキュラムを準備していない学校があるというのは教育体制として問題があります。

“行き当たりばったり”学習とはどういうことを言うのでしょうか。それは、如何なる本でも英語学習の教科書になるという誤った認識です。例えば、子供に与えた本にgoを習う前にwentが出てきたらどうするのでしょう?動詞を習っておらず、現在形と過去形の違いもわからない子供に「それは“行った”っていう意味なんだよ。」と教えたところで、英語の構造の理解に繋がりません。英語の音とスペルのパターンを教わっていない子供がbitとbiteの発音が出来るようになったところで、カリキュラム無しではkitとkiteが発音出来るようになるとは限らないのです。英語の構造を理解するフレームワークが出来ていない内は、2、3歳の幼児が一つ一つ言葉を覚えていくように全て一つ一つ丁寧に記憶していくしか方法がないのです。その上、英語学習用ではない本だと、初めのページでwentが出てきても、次のページに同じような過去形動詞が出てくるとは限らず、反復的に復習する機会が乏しくなるため、学習したことを忘れ易くなり、過去形の説明がやっと終わったと思ったら、次のページにはgeeseという不規則な複数形が出てきたりして、学習しなければならない英語の構造などもあっちこっちに飛び続けるので、混乱も招くわけです。ですから、特に高学年に多いと思われる、ESLのクラス用のワークブックもなく、ただ他の教科の学習や宿題の手伝いをしているようなESLのサービスでは、肝心な学習活動に必要な英語力はつかないですし、授業中に通訳をつけても、宿題を見てくれる家庭教師をつけても、授業内容を把握しなんとか宿題を提出できたとしても、独力で学習を進めていけるのに十分な“英語力”がつくわけではないのです。言語教育以外の教科書や読書は、語彙を増やすには役に立つと思いますが、語彙以外では、かなりの量を読みこなさないと英語の構造を理解するための予習にはならず、寧ろ学校で習った言語学習の復習に効果を発揮するものです。構造の理解無しに読書に挑戦したところで英語力向上を望むのは現実的に無理があるのです。

カリキュラムが整っていない場合は、極端な言い方をすれば、子供は英語を第一言語としているアメリカ人の子供達がやってきたように一つ一つ新しい単語を覚えていき、語彙がある程度増えたら、自分で英語の構造を探し出せと言われているようなものです。家庭でも英語を話しているアメリカ人の子供達は、系統立った“国語”を学校で習い始めるまでに5〜6年程も語彙を増やす時間があり、家庭での会話や絵本などから習得した語彙をサンプルにしながら学校の授業で英語の構造を理解し、更に語彙を増やしたり、作文の練習をしたり、本の読み方を身につけたりして、驚異的な速度で言語力をつけていくのです。途中から現地校に編入した場合、子供達のESLサービスが語彙を増やすのに5〜6年+アメリカ人の子供達が国語学習に費やしてきた期間提供されるわけではないことでも分かるように、はやく英語を学び他の生徒に追い着けという暗黙のプレッシャーが学校にはあり、英語学習が教師が期待した程伸びないという子供に対して学校側が注意信号を出すことも多いかと思います。注意信号を発する学校側がしっかりしたESLカリキュラムを提供をしていない場合、子供が英語学習に戸惑うのは当然であり、寧ろ、カリキュラム無しで学習出来る子供の方が驚くべき学習技術を身につけているのだということ、途中から現地校に編入した、英語を非母国語とする子供に対し、英語を第一言語とする子供達が受けてきた国語教育以下の言語教育しか学校側が提供していないにもかかわらず、英語を第一言語とする子供達より言語習得のはやい学習を期待しているという矛盾を学校側も家庭側も認識する必要があります。系統立ったカリキュラムのないESLプログラムだと、子供の持ち帰ってくるプリント等を見ても、家庭でもどう英語学習のヘルプをしたらよいのかわからないことが多いと思います。アメリカ人の子供達よりはやい速度で英語を学ぶことを期待されているわけですから、家庭での学習サポートは必須で、家庭側が子供が何を学んでいるのか単元内容の見当もつかないというのであれば、学校側に問題提起し、事態の改善を求める必要があると思います。

戻る

05/03
Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!