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「世界選手権騒動記録13」


記録 13(4月1日(土)) 女子フリー

会場に着くと既に演技が始まっていた。うそーまだ4時過ぎだよ!?幸いまだ第1滑走の選手。よかったSiyinちゃんは見逃さずにすんだ。
あら、予選と衣装が違う。

硬くなっていたのか目が慣れてしまったのか、予選と違ってえらく動きがぎこちなく感じた。転んだジャンプもあったし。
男子シングルと同じように予選からほぼ半分に絞り込まれた女子フリー、同じグループの選手の演技を見ると彼女はよくフリーにまで進んだものだと思う。今回は120%の力が出せたのでは。そういえば中国女子のフリー進出は陳露以来(多分)で快挙といっていいかもしれない。関係者は喜んでいるだろう。
国内戦4位の彼女がどういう経緯で四大陸の代表になり、さらにどうやって世界選手権の代表になったのか知る由もないが、とにかく今回実績を作ったのだから来シーズンの中国女子の実質的な一番手ということになるのでは。「ポスト陳露」として期待され、ひょっとしたらGPシリーズに派遣されるかもしれない。

これから海外の試合に出て大きくなっていってほしいが、シニアのGPに出るには今はちょっと…彼女はじっくり育ててほしい。来シーズンはジュニアのGPで経験を積んで、再来年に雪ちゃんと一緒にNHK杯に来てほしい。その時にまた会いましょう。
その時にはもう少し背が伸びて体つきも変わっているでしょう。いろいろ想像して花束作って待っているから、そのイメージを裏切るくらい成長していてね。おねーさんはその日を楽しみにしているわ♪


今日の席は男子フリーの時とほぼ同じで、ジャッジ側で選手がリンクから戻るところの真上である。ついでに言うとあのやかましい集団のすぐ近くになる。

第1グループ最終滑走のフォンタナの時にこの集団がえらく盛り上がった。まあお隣のイタリアの選手だし、フランスではおなじみなんだろうと一瞬考えたのだが、会場全体ではそれほどでもない。昨日のアイスダンスフリーに来ていたイタリアン応援団も残っているようで、2つのグループで局地的に盛り上がっている。おそらくこっちの集団は彼女のファンなんだろう。わかるわ、これだけ楽しそうな顔をして滑られると(^^)。
残念ながら彼女の出来は悪かったのだがそんなことは関係ない。キス&クライへ向かう時にはこの集団が盛大な拍手と歓声、彼女もそれに応えて手を振っている。しかし「Silvia, I love you!(うぃーず投げキッス)」はやり過ぎだと思うぞ(笑)さすがにこれにはちょっと困っていた。


ショートでジャンプを全てミスしたマリニナは第2グループの滑走になった。NHK杯でパーフェクトなマラゲーニャを見ているだけに、今の彼女を見るのは辛い。しかし一瞬こういう表情も見られたので写真を載せておくことにする(とはいってもパソコン上で表情がわかる写真ではないか)

来年戻ってくるのを待ってるからね。







恩田美栄ちゃんは後半でバテたのだろうか、終わった後でちょっと悔しそう。でも今回の世界選手権は力を出せた試合だったと思う。これで自信をつけて、来シーズンはもっと大きくなった姿を見られるだろうと思うと楽しみ。
Siyinちゃんもそうだったがフリーで調子を落とす選手が多い。こうして見ているとつくづく女子シングルはハードだなのだと感じさせられる。考えてみればオープニングドローに合わせてぎりぎりでも日曜日に現地入りし、それから女子フリーがある土曜日までずっと試合を意識した状態でいなければいけないのだから。ただでさえ調子を崩しやすい海外だと維持するのはさらに大変だろう。


ここで変なこすり方をしてしまったのか、カメラのレンズが汚れてしまった。拭けば拭くほど曇っていく。ぎゃー!
これであたふたしていたために第3グループはジェニファーを除いて記憶にない。


そのジェニファーはたぶんパーフェクトだったと思う。ひょっとして…と思ってはいたが、モニターで現時点の順位を見てびっくりした。カナダ女子来年2枠獲っちゃったよ!FSWの順位予想で彼女をトップ10以内に入れているのを見ても「ヨーロッパの有力選手は眼中にないな…視野の狭い北米人らしい」と思っていただけに本当に悪かった。
キス&クライでもみんな喜ぶ喜ぶ、なんと言っても一番喜んでいたのはミシェルさん。席を立った後キス&クライの横でずっとジェニファーを抱きしめている。
四大陸の公開練習を身に行った時の事を思い出す。日本に着いて間もないだろう日曜日、朝一番の6時半の公開練習にカナダ女子では彼女一人だけが出ていた。ミシェルさんと話をしつつジャンプや振付を一つ一つ確認するように滑っていた。
選手とコーチは二人三脚で戦っているのだろう。


いつのまにか最終グループになってしまった。ここまで来るとカメラにかまっている場合ではない。だめでもともと、写真は映っていれば儲け物ということにしよう。
第3グループの最終滑走がニコディノフ、最終グループの第1滑走がミシェルとアメリカ勢が続くだけにアメリカ応援団のテンションが高い。隣のカナダ勢に比べてどうもノリが悪かった彼ら、やっとエンジンがかかったか。それとも今のためにずっとセーブしてたとでもいうのだろうか。皮肉の一つも言いたくなる。


そのミシェル、始めのコンビネーションが成功して観客が女子シングル一番の盛り上がり。最初でここまで盛り上がるか、さすがアメリカ応援団…と醒めた目で見ているうちにミシェルが目の前を通り過ぎる。
なにこのミシェル!?

結局ここからアメリカ応援団と同類になってしまった。いやアメリカ応援団だけではない、会場全体がヒートアップしていたはず。
今年のGPシリーズ、加えて予選、ショートと滑りが全く違うのだ。なにこの勢いは!
凄みのある滑りが旋律を官能的で不気味なだけでなく、その後の惨劇まで予感させるものに変えている。まだ前半、まだ中盤、飛ばしすぎて後半崩れる可能性もある。そう言い聞かせてもジャンプがきまるたびに興奮が大きくなる。静かな曲の演技の時に騒ぐのは演技を見ていないからではないかと苦々しく思っていたがそうではない時もあるのだ。すごい、すごすぎる。
抽象的で不気味さが増す中盤から一転、終盤一気に訪れる嵐。またここで私の前を通りすぎる。まだスピード上がるか!?ちょっと―――!!!

嵐が過ぎた後何もなかったように始めの旋律に戻るが、観客は始めと同じ状態でいられるはずがない。演技が終わらないうちにスタンディングオベーションする人の気持ちがわかった。

ミシェルの勝ちだ。

順位点の都合で最終結果がどうなろうが(ミシェルがフリー1位を獲ってもブティルスカヤがフリー2位ならブティルスカヤの優勝になる)ニースの女王はミシェルだ。テレビと生の印象を比べるのは何だがローザンヌのフリー並、今まででベストの演技に違いない。きっとミシェルの伝説がもう一つ増える。
去年あれだけ非難して女子シングルの始めに「白紙で行く」と決めておきながらこの変わり身の早さに後ろめたさを感じないわけではないが、過去にこだわるより今の感動を素直に表した方がまだ潔いだろう。第一滑走でこう思うのは危険だが、ブティルスカヤとスルツカヤがこのミシェルに勝つにはただのノーミスの演技では足りない。
もちろん彼女達だからこのミシェルを上回る演技をする可能性は充分ある。もしそこまでレベルの高い争いになったらこっちとしては眼福というもの。
さあどうなるか。


その次のギスメロリ。スターティングオーダーを持ってはいたがカメラのトラブルで慌てていて、最終グループのメンバーを把握していなかったので彼女が最終グループというのが意外だった(ごめんね^^;)。ショートでここまで順位を上げていたのか。
その彼女はミシェルの時の興奮をそのまま引っ張るいい演技。あの予選からよく這い上がってきたよなあ…と考えかけて愕然とする。彼女が這い上がってきたのは予選からどころではなかった。
スケートアメリカで現地入りしながら練習中にケガをしたためにGPシリーズの試合を全て棄権してしまい、国内選手権は優勝したもののトリプルが一つしか(多分)きまらない出来だったらしい。オープンフィギュアで来日した時のフリーも「オープン用だからいろいろ抜いてはいるんだろうけど、これからの試合は順位的にきついだろうなあ…」という印象だった。彼女そこから戻していたんだった!
もう少し早く気づけばスタンディングオベーションしていたものを…。


ペアとアイスダンスの最終グループは何か暗くどよめいたものがあったが、女子になってやっと明るい興奮に満ちた空気になった。(男子?感じる余裕ありません(笑))しかしそれでも世界選手権の最終グループ、選手にとっては他のグループで滑る時とは違う空気なのかもしれない。初めて最終グループ入りしたセバスチェンにとってはどのようなものだったのだろう。
清楚なショートは好きだがフリーは無理に子供っぽくしているようで、最終グループの中では苦しい印象がある。しかしミスはあったがボロボロになって観客が冷めてしまうことはなかったところが最終グループ入りする実力者というところか。まだ彼女の色を把握できていないので、来シーズンはGPシリーズで放映される常連になってほしい。


「くじ運が悪かった」という言葉は今度はブティルスカヤとスルツカヤの二人に当てはまる言葉だったらしい。二人とも転んだわけではないのだが……。

やはりというかスルツカヤの得点が出るまでの間にミシェルの映像が映る。優勝が決まる緊張した映像…と思いきや、ミシェルは床の上に仰向けに寝転がっていて、会場に笑いが起こる。私もつい笑ってしまった。クールダウンの最中だったのかな?


優勝が決まった後の最終滑走はよほどのことがない限り気が抜けてしまう。ところがこのサラ・ヒューズが意外な見せ場を作った。コンビネーションのセカンドジャンプが二つともループ!(三つだった?)不完全だったが、サラちゃんあなたなんつー大胆な。
「彼女来年はトリプルアクセル跳ぶわよ!」という隣のおばちゃんのセリフは行き過ぎだと思うが、綺麗な演技をするしこれは来シーズンの上位争いが変わってくるかも。



表彰台の用意をしている時のこと。モニターに自分の顔が映し出されているのに気がついてブティルスカヤがおどけるように笑う。その側にピンクの花束を持ったヤグディンが立っている。
二人の年齢差が縮まって見える。

表彰式が終わった後、鼻歌でも歌っていそうな足取りでカメラマンの前に真っ先に行くブティルスカヤ。合同の写真撮影を終え、急ぎ足でリンクサイドへ戻っていく。ミシェルとおしゃべりしながらカメラマンの前に行き、写真撮影が終わった後ミシェルに笑顔で一声かけてから戻っていくスルツカヤ。リンクから上がる時に表情が変わる。係員が持っている書類にサインをし、急ぎ足でキス&クライの向こうへ去っていく二人。
勝負にかけるものの大きさと誇りの高さを感じてなぜか涙が出た。
確かに彼女達も女王である。


そしてリンクの上では勝ち残った二十世紀最後の女王の写真撮影が続く。
おめでとう。


来年はどんな三人の女王の戦いが見られるだろう。



何だかんだ言いながら毎日試合が終わった後にオフィシャルホテルに行っている。
スケジュールのチェックも選手の姿を見るのも目的に入っているが、一番の目的はホテルのロビーにいるスケートファンの方々。私は日本語でしゃべる時間がほしいし、シェリルはシェリルで「周りの観客がフランス人ばかりで話ができない」ので素で話をすることができずにストレスが溜まっているのだ。ほぼ毎競技で周りの人と話をしている私にしてみれば信じられない話だが、東洋人で明らかに外国人とわかるので英語で話しかけてもらえる私と違い、金髪碧眼の彼女は地元民と思われてしまうのだろう。
幸いシェリルは男子フリーの時に英語のネイティブスピーカーでないもののかなり英語を話せるスケートファンを見つけたようで、それからは彼女にフェレイラ君の話をしているようである。今日初めて顔を見ると去年ユースで会った人だった。

彼女は私のことを覚えていなかったがそこはさすがに大物ファン、「誰のファンなの?」から始めて話をしているうちに現像したばかりの綺麗な写真を見せてくれる。初対面でもこうなるあたり、同じことでつながるファン同士っていいなあ。
彼女は選手にあげるために写真を入れた封筒をいっぱい用意しているのだが、その中には中国勢の名前が書いたものまである。雪ちゃん達なら驚くことはないが、フランス人の彼女なら去年の世界選手権でしか見ていなかったであろうパンちゃん達と中国ペア(ペア2番手とアイスダンス)。視野が広い!

「好きなスケーターはいっぱいいる」と言う彼女、そのうち写真をプレゼントしたい相手がホテルに帰ってくると早速アプローチしに行く。ジャージを着ているので選手とわかるものの、どこの国のどの種目の選手か私にはわからない。そこまで知っている選手の範囲が広くてなおかつ写真をプレゼントしたくなる何かを見出す彼女の視線の細やかさに感動。
そしてもらった方の選手といえばそこは10代(多分)の女の子達、もらった写真を見せ合ってひとしきりきゃあきゃあ喜んだ後にたどたどしい英語で「Thank you very much.」。いいなあこういうふれあいって(^^)。

その後彼女に背中を押されるようにしてアンソニー・リウに写真を渡しに行ったのはいいが、完全にタイミングを逃してしまい渡すというより「これプレゼントです」と押しつけて逃げるという状態になったのはあまり堂々とはネタにできない話である。変に思いながらも「Thank you」と言ってくれたアンソニー・リウはいい人だ…

選手にアプローチするのにもコツが必要なようで。あー恥ずかしかった(--;)。


昼間の市場は夜はレストラン街になっている。やっとまともな晩ごはんが食べられる…が、シェリルはシーフードが苦手らしい。ニースでそれは致命的だよ(^^;)。


いい場所に行った。いい演技を見た。いい人に会った。
それなのにそのままの気分で一日を終わることができない。

人生の大部分をかけて磨いたもので戦う勝負に敗れても笑顔で相手を祝福する誇りを持つ人間がいる一方で、見ているだけのファンの分際で自分が好きな選手のライバルの引退を願い、それをライバル選手のファンの前で口走る人間がいる。
そしてそれを許せない人間がいる。

(14へ続く)

追記: 結局予想が当たり、Siyinちゃんは'00スケートアメリカにエントリーされています。ああっ気になる。でも誰も注目しないだろうから様子もわからないだろうなあ…去年と同様カメラの制限もあるらしいですし。
実はこのスケートアメリカ、Siyinちゃんのみならず、雪ちゃん達と郭君もいる中国勢御用達の大会である上に、都築さん達までいるのです。これは私に見に行けと言っているのか(笑)?
このメンバーにエルビスが加われば見に行くことを考えていたと思います(男子シングルどうするんだよ)。でも不思議にエルビスと郭君ってGPシリーズでぶつからないんですよね。

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