学校環境の選択問題


初めてのケーススタディで言語発達の遅れや言語発達と関連のあるなんらかの障害があるので、特殊教育サポートのサービスが必要であるという結論にいたった場合、非常に頭を悩まされるのが、学校環境の選択です。特に、駐在などでアメリカ滞在が永住と違って短期間で日本に帰国するのがわかっている場合、子供の生活・学習言語を英語にする重要性がない上、現地校で特殊教育のサービスを英語で受けたところで、言語環境の変更を余儀なくされて、結局、日本語の回復や習得に時間がかかることは避けられない。そこで、疑問に挙がるのが、―まぁ、選択があればの話ですが―日本人学校を選択して日本語への接触を集中的に増やして言語発達を促す方がよいのか、英語で現地校でのサービスを受けておいた方が意義があるのかという問題でしょう。(もちろん、日本人のセラピストによるセラピーサービスを受けられるのがベストですが。)どういうことを考慮したらよいのか注意点を挙げておきますので、お子さんのために各家庭でよく考え、話し合ってよりよい選択をしてあげて下さい。

【滞在予定期間】

英語でサービスを受けるにあたって、英語がわからないと意味をなしません。子供がまだほとんど英語を知らない場合、言語療法士によってはESLで英語力をつけてからじゃないとセラピーはしないとはっきり断る場合もありますので、まず言語療法士のセラピーにおける考え方を確認して下さい。片言の英語でも、セラピーの内容を理解し始めるのには少なくとも半年近くかかると知り合いの言語療法士が言っておりましたので、セラピーの意味がわかり始めるまでの期間を差し引いた残りのアメリカ滞在期間がそれほど長くないのでしたらむしろ日本語力をつける方に目を向け、日本に帰国してから日本語によるセラピーを受けた方がよいのではないでしょうか。

【親の英語力】

現地校で子供がまだ十分理解できない英語によるセラピーを受けることに頼るだけでははやい効果は見込めません。親が特殊教育の先生や療法士と意思疎通がある程度できないと、子供が学校でどんなセラピーを受けているのかわからず、いかにそれを家庭(日本語環境)で生かせるかというレベルまでセラピー内容を引っ張っていけません。学校でやっていることを家庭でも日本語でやることによって、子供の学んでいるスキルの練習量も増え、また、言語環境に関係なく一般化できるようになるので、日本語環境での効果を上げるためには親の英語力は無視できません。

【日本人スタッフの有無】

言語療法士などが日本語ができなくても、学校に日本人のスタッフがいて、療法士が日本人スタッフを訓練してセラピー内容を日本語で実行できる環境にある場合、その日本人のスタッフを大いに利用する価値があるのではないかと思います。日本人スタッフとの連絡を密にとって、セラピーの内容を教えてもらい、家で実行するのも楽になりますし、もし療法士がスタッフを訓練するスケジュールがわかれば、一緒に訓練に参加させてもらうこともできるかもしれません。しばらくセラピーの経験をして内容や方法が把握できれば、後に特殊教育のサービスのない日本人学校に移ることになったとしても、家庭でセラピー的内容を続けることができます。そして、日本人学校に変わったとしても担当学区の療法士に電話などで相談し続けることも問題ありません。知り合いの言語療法士の考えですと、サポートのない日本人学校に行ってもどんどんクラスメートから遅れをとるだけなので、現地校でセラピーの経験をしておくのは重要だと思うとのことでした。そして、セラピー経験の有無ではかなり発達促進度に差が出るとのことでした。

【プログラムの長さ】

セラピーを始めるにあたり、幼稚園ぐらいまでの年齢でしたら、大抵プログラムの長さが半日なので、現地校で半日のプログラムに入って必要な各療法のサービスを受けながら、週に何度か日本語の半日の幼稚園やお遊びグループ等プログラムに定期的に参加して日本語環境への接触も維持するという選択もあるでしょう。アメリカ人の子供でも発達促進プログラムに午前中通いながら、週に何度か一般のプリスクールや幼稚園にも午後通っているパターンが見られます。幼児にいきなり1日中のプログラムというのはおそらく体力・精神的に大変なので、だいたいは週に1度から始めて、慣れてきたら3度ぐらいまで増やしているようですが、どちらかのプログラムに柔軟性があれば、片方の時間を徐々に増やしていく方法もあるかもしれません。

【セラピーの内容】

言語療法でしたら言葉の問題が入ってくるので、大変複雑ですが、作業療法や理学療法の場合は動作の訓練で言葉はそれほど重要でなくなるので、セラピーの効果が出やすいのではないでしょうか。その上、もし、セラピーセッションを見学できれば、英語での意思疎通が不安でも目で見てどういった活動をしているのか学ぶこともでき、家庭での遊びやおもちゃの選び方などにも取り入れやすいと思います。言語発達の遅れが見られなければ、ESLと並行してサービスを受ければ問題ないでしょう。

【子供の年齢】

子供同士のやりとりがまだ言葉よりも動作に頼っているような年齢で、特に子供の社会性の欠如が心配な場合は、どうやって集団で遊んだらよいのか、真似をする練習、順番を待つ練習、代わりばんこの練習、おもちゃを共有する練習など、周りの環境を観察して判断するスキルをつけるのには発達促進プログラムはよいかもしれません。言語発達が遅れていても、絵を使った指示やスケジュールをふんだんに使うので、家庭でも同じ方法を用いながら日本語を教えていくことができます。特に子供の社会性の欠如と聴覚処理の問題によって子供との意思疎通自体が困難な状態であれば、学校のプログラムで使っている様々な方法を学んで、家庭生活にも取り入れていくべきでしょう。見学させてもらえればわかると思いますが、発達促進・特殊教育プログラムはアイディアの宝庫でびっくりすると思いますよ。

【各学校の柔軟性】

最近の教育法の変更により、現在は私立学校に通っている子供の査定は、私立学校が位置する公立学区が担当しており、査定後その学区からこういったサービスが必要ではないかとある程度提案されるので、日本人学校に通いながらそこの学区でセラピーを受けられる可能性もなくはありません。ただ、どれぐらいのセラピーが受けられるかというのは、おそらく学区の方針、学区のセラピストの忙しさにもよるのではないかと思われます。学区や学校側と話して部分的ダブルスクールが可能かどうかを追求してみるのもよいかもしれません。実際例として、幼児ではなくミドルスクールの生徒ですが、私の担当学区で、午前中は私立の学校の通い、午後特殊教育のサービスを受けるためにお母さんが私立学校から公立学校へ毎日子供を移動させているケースがありました。学区の決まりで直接サービスを受けるためには少なくとも2時限は普通学級のクラスを取らなければならないということだったらしく、確かこの男の子はアカデミックなクラスは私立学校でとって、リソースのサービスの他に音楽だとかアートのような実技クラスを公立学校でとっていました。幼稚園から中学校まではエレメンタリーレベルとして同じシステムで機能しているので、低学年でも形としては可能性があると理解してよいでしょう。


☆ ☆ ☆

英語の環境に置かれると、結局、内容よりも英語を学ぶことにまずエネルギーも時間も費やされてしまうので、日本人スタッフがいないところでの特殊教育サービスを一時的にしたところでどれぐらい効果が得られるのかという疑問が湧いてくるのですが、最終的にはセラピー内容をいかに親が理解し家庭での活動にも取り入れていけるかという家庭側の力量にもかかってくると思います。子供時代は言語でも学習内容でもセラピー内容でも、学んだことをいかに繰り返し使って練習できるかというプロセスが大切ですので、現地校のセラピーで学んだことを家庭でも実行し続けることができれば、全くセラピーの経験がなく、特殊教育サービスの設置されていない日本人学校でずっと過ごして知らないうちにどんどん遅れていくよりは、遅れの歯止めには効果があるように思われます。ただ、やはり、今までずっと家庭で日本語で生活してきて子供はほとんど英語を知らないのに、英語しか話さない言語療法士の言語療法を受けるという場合は内容的にも効果的にも疑問が残りますが。学校に日本人スタッフがいない場合は、日本人のアシスタントやボランティアを雇って言語療法士から訓練してもらえないかと聞いてみるのも私からの一案です

家庭でセラピーの内容を実行する際には、親子のやりとりに限らず、兄弟や近所の大人や家庭教師など、子供と関わりのある人達に今セラピーでどんなことに取り組んでいるのか知ってもらって、子供との何気ないやりとりでも意識的に働きかけてもらったり、友達との遊びなどでも最初は親も一緒に遊びに入り、子供が必要とする遊び方を他の子供達に見せるなど、いろんな場面に応用できるようにすると効果があると思います。特に学校で日本語でのサービスや日本語との接触に限りがあるのでしたら、なおさら、学校外でそういった環境を整える努力が必要になると思います。学校側にセラピーの目標を作ってもらったら、それを参考に考えたり、スタッフに相談して家でどういう風にしたらよいかというアイディアを提案してもらうこともできるでしょう

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