公立と私立学校の違い


日本と同様、アメリカにも公立と私立の学校があり、教育方針やカリキュラムにかなり違いが見られます。公立か私立かで学校と家庭、先生と子供の関係なども変わってくるので、ここでは、どういった根本的な違いがあるのか簡単に紹介したいと思います。

本サイトで『現地校』として念頭に置いているのは全ての子供を対象とした教育法が適用される公立学校の方です。公立は全ての子供の個々に相応しい教育を提供しなければないので、英語が流暢でなかったり、機能的な障害を持っているため、普通の学級の授業でサポートなしに学ぶのが困難な子供達が必要とするサービスも調えておかなければなりません。しかし、現実的には資金やスタッフ不足で各学校に全てのサービスを揃えることが不可能であるので、学区、もしくは、複数の学区や市町村からなる地区でサービスを共有する形をとっているところがほとんどです。(例えば、ESLの先生不足のために、学区内でESLサービスの必要な子供達を1つの学校に集めて教える形や作業療法士が地区から派遣されるといったパターンなど。)サービスが子供の学校に揃っていない場合は、子供に相応しい教育を提供する義務のある学校側の責任になりますから、例えば、子供がサービスを受けるために1日のうち数時間、もしくは、一定の期間、別の学校に移動しなければならないことになったとしたら、交通手段/交通費の手配はもちろん学校持ちになるわけです。子供にどのようなサービスが必要であるかというのは学校側からも提案がありますが、全て親の判断と承諾を通して実行に移されるので、親がいかに子供のことを把握しているかが重要になってきます。学校側の判断だけで子供のサービスを変更することはできません。親が学校や学区側のサービスが不十分だと判断すれば、特定の手続きを取って、学校側の負担でサービスの整った別の学区の学校へ転校することもできます。(実際、シカゴ近郊の学区が重度自閉症の子供の教育が施せないということで、日本の自閉症専門の特別教育支援学校に子供を送るということになり、飛行機代から日本での滞在費まで全て学区側が支払ったということがあったそうです。かなり昔のお話になりますが。)

私立には教育法に従う義務がないため、"全て"の子供に相応しい教育を提供する必要がありません。ですから、ESLのクラスや特別支援教育系のスタッフやサービスを設置していなくても問題になりません。カリキュラムや学習内容も各学校の自由になるので、Waldorf Schoolのように教科書に頼らず高校まで実践教育を徹底しているようなところもあれば、Latin School of Chicagoのように100%の大学進学を徹底しているところもあります。教師の資格も州の資格を必ずしも必要とはせず、Montessori Schoolのように独自の教員資格を設置しているところもあります。各学校によって教育哲学や方針が異なり、はっきりと打ち出しているため、子供が入学する前に学校の活動やサービス内容の親側の十分な下調べが重要になってきます。公立学校のように子供が入学してから《言語療法サービスが欲しい》というような柔軟性には欠けると思いますし、学校側が提供するサービスに限りがあるため、子供の性格が学校に合わなければ、転校を学校側から一方的に勧められることもあるかもしれませんし、成績が十分でないということで一方的に留年を通告されることもあるかもしれません。

私立の学校に通っていて、学校で学習問題が出てきて査定が必要になったという場合、公立学区のサイコロジストが子供の学校を訪れたり、サイコロジストのいる公立学校に子供を連れて行き、心理査定や学力評価をしてもらうというケースが頻繁にあります。私立学校に設置されていない査定評価サービスは、子供が通っている学校の運営システムに関係なく全ての子供を対象とした公立システムで無料提供されるので、それを利用している私立学校がほとんどです。しかし、その結果どういう教育サービスを提供するかを判断するのは私立学校の責任になり、例えば、親が私立に通わせながら数時間だけ公立学校のサービスを受けさせたいと思ったとしても、学校側の判断に応じなければならないと思います。私立の場合、あくまでも親は学校の方針に共感して自発的な選択で子供を通わせるわけですから、学校側の判断をサポートする立場にあり、子供個人に必要な特別なサービスがなされなくても学校の教育哲学や方針に合わなければ仕方がないことなのです。

というわけで、経済的な理由やサービス不足から私立から公立へ途中で転校してくる子供達もいるのですが、自由な校風の私立から公立に移って学校に馴染めなくなるケースもあります。以前、幼稚園を私立で過ごし、1年生から公立に移った子供がいたのですが、授業活動に参加するのが苦痛で先生の言うことを聞かなかったり泣き出したりするので、どうしてかと幼稚園時代のことを調査したら、幼稚園のカリキュラムがほとんど一日中自由時間で先生の話を聞いて文字や数の勉強をする時間が毎日15分間だけだったということがわかったということがありました。もちろんそういった学校経験を持ちながら公立の1年生学級に進級するというのは、1年間の経験を基に子供が今まで持っていた『学校』の概念さえも覆すわけですから、子供にとっては大変なことであり、不適応を起こしたところで無理もありません。

公立にするか私立にするかは、家庭と学校の教育方針の共通性、子供の性格とニーズ、学校で受けられるサービス内容、教育にかかる費用などが決め手になるのではないかと思います。特に私立は各校の教育哲学がユニークでカリキュラムやサービスも独自に決定し、その分柔軟性に欠けるため、子供のニーズに合ったものかあらかじめ十分な調査をすることをお勧めします。公立と比較した私立学校の長所は、幼稚園から高校まで特定の教育哲学を基にしたカリキュラムがしっかり組まれているところが多く、子供の学習経験に必要な一貫した流れが長期間維持出来ること、カリキュラムがしっかりしているため親が子供の学習内容を把握しやすく家庭でのサポートもしやすくなるであろうこと、似た価値感を持った家庭が集まるため、家族同士の協力もおそらくしやすいであろうこと、学校で同じ子供達が長期間一緒に過ごすことになるので、学校コミュニティの一員として参加しやすいこと…といったところだと思います。私立と比較した公立学校の長所は、親が子供個人のニーズを提唱し、必要であれば個人の教育プログラムを組む一端を担うことが出来る柔軟性があること、幅の広い専門家が揃っており必要な教育サービスを無料で受けることが出来ること、クラスメートが近所にいるため、学校外でもコミュニティから孤立することが避けられること、私立よりバラエティに富んだ子供達や家庭を現実社会として受け入れられる環境にあることと言えると思います。

*私立の学校と言うと日本で言うインターナショナルスクールを想像される方もおられるかと思いますが、子供達の多様性という面では、アメリカでは公立学校の方が遥かにバラエティに富んでいます。

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