現地校裏話〔5〕:
しつけ教育

サイコロジストの仕事内容柄、いろんな授業見学をすることが非常に多いのだが、先日感心したのが、ベテランの美術の先生。2年生のクラスでハロウィン用の飾りを作っていたのだが、ひとりの生徒と話している時に他の生徒が「先生、これどう?」と自分の作品を先生に見せるのに袖だかを引っ張って話し掛けた。すかさず、先生は「ちょっと待ってね。」と初めの生徒に言い、話し掛けてきた生徒に向かって「あなた、今自分が何をしたかわかってる?先生は今ルーシー(仮名)と話をしていたの。それをあなたは割り込んで、自分の話を先にしようとしたでしょう。そういうやり方ってルーシーにとても失礼だし、相手が誰であっても非常に失礼だわ。今後は先生が誰かと話をしている最中だったら、話が終わって自分の番が来るまで待っていなさい。」と即座に注意し、またもとの生徒との話を続けた。また、先生が他の生徒と立って話をしている最中にそのふたりの間を横切った生徒がいたのだが、その時も話を一度中断し、横切った生徒を呼び戻し、「あなた、今どこを通った?先生とチャーリー(仮名)が話をしていた間を通ったでしょう。人が話をしている前を通るなんて大変失礼なことしてはいけません。こういう場合は話をしている人達を避けて通るもんでしょう。ほら、もう一度やり直し。こっちに戻って。さぁ、先生とチャーリーが今ここで話をしています。あなたはどこを通る?」と実際に歩き直させ、「ほらっ、ちゃんと出来たでしょう。次からよく注意しなさい。」と言って、初めの生徒との話に戻った。多くの先生は授業の妨げになるという理由から授業中のおしゃべりなどを注意するのだが、この先生は社会的な理由で注意をしており、それが日本の古き良き(?)“近所の怖いおばさん”的で私には新鮮に感じられた。子供というのは注意力が長続きしないので、何か不躾なことをした場合、その場ですぐ注意をしないと理解できないことが多いため、躾を学校が家庭だけにまかせる、もしくは、家庭が学校にだけまかせるというような役割分担では効果がない。家庭と学校と連携して継続的に行って初めて子供がきちんと振る舞えるようになると思うのだが、学校で規則に縛られた生活をしているからと家庭で全く制限を設けず子供の好きなようにさせている親、家庭で甘やかされているから学校では何をしても効果がないと思っている教師が意外と多いのがちょっと気になるところ。そんな中、注意する時に社会的な意味も説明するこの美術の先生はとても貴重な存在に感じられた。

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10/03