勉強嫌いにつながる子供の初期学習経験


幼児期・就学初期の学習経験というのは後の子供の学習取り組みに影響するので、例えば、家庭でどんな本を与えるかというようなちょっとした学習環境・条件が大切になってきます。子供が小さいうちの読み聞かせが大切だというのは明らかですが、読み聞かせの他に自分で読めるレベルの本が家にないと、親が子供の相手をすることができない時に、自分で本を開いても読めないため、子供がストレスを感じることになってしまうわけです。実際、「○○ちゃん、どんな本を読んでいるの?」と訪問者が4歳の女の子に聞いたところ、本を持ってきて、自分でページをめくって2、3絵を指したものの、自分が訪問者に読んであげられなくて癇癪を起こし、結局、本を閉じて放り投げたというエピソードを身近に聞いたことがあります。本来、子供は普段親にいろいろ教えてもらうことから自分でも真似をして、おもちゃの使い方やら本の読み聞かせやらマナーやら、自分の知っていることやできることを他人に見せたり教えたがるもので、そういった自分が学んだことを誰かに自慢できる(そして、披露する行為を受け入れてもらえる)環境があるというのは、今後の学習への自信にもつながります。生まれつき勉強嫌いの子供なんていないのです。どんな子供も好奇心に溢れ、新しいことを学ぶのは楽しいはずなのです。しかし、勉強嫌いの子供が少なくないというのは、初期の苦い学習経験によって『勉強はストレスを伴うものだ』というメッセージを何らかの理由で受け取ってしまうからなのです。(ちなみに、思春期になると『勉強するのはクールではない。』とか『学校の勉強は役に立たない』という自分の勉強をしないことを正当化する理由に変わってきます。どんなに聞こえのいい理由でも、勉強をしないで言っているうちは正当な理由にはなりません。“役に立たない”と言えるのは実際に勉強をして社会に出た人が判断できることであり、社会経験のない生徒が言っている場合は、学習活動のつまづきから来るストレスを隠そうとする表れであることが多く、周りがつまづきに気付いて内容が分かるように生徒に指導する必要があるのです。)特に学習経験の初期である家庭での絵本など、自分の読める本がある、誰かに声を出しながら本に書いてある文字や単語を披露することができるというのは、後の学校における、より複雑な文字中心の学習へのスタート地点として、非常に重要な経験となるので、子供が『自分の能力では対応できない活動』『自分のコントロールが及ばない範囲』という挫折感を持ってはいけない時期ですし、これからの長い学校生活を考えた場合、ストレスを感じるには早過ぎると思います。別のセクションでも触れましたが、子供が個人で楽しめる読書の範囲は、本の中の言葉の97%以上が知っているもの、大人の助けのいるチャレンジングなレベルの本でも93%以上の言葉は知っているものであるのが学習を長続きさせる理想的な条件であるので、家庭では、子供の学習サポートとして、日本語でも、英語でも、子供が個人でも楽しめるレベルを満たす本を用意するなど、子供の言語レベルを考慮した環境づくりが必要になると思います。

子供の初期の学習経験に関連して、就学以前の早期教育にも触れておきたいのですが、たとえば、柔軟性があり記憶力が優れているからと、学習時間を長くしたり、学習内容を多くしたり、あれもこれもと早期教育を施したところで、効果が見られるのは短期間だけと言われています。たとえば、幼稚園の半日プログラムに通っていた子供と全日プログラムに通っていた子供では、全日プログラムに通った子供の方がしばらく学習進度がはやいのですが、3年生ぐらいまでには差がほとんどなくなるという調査結果がありますし、4、5歳からカリキュラムのしっかりした学校教育を受け始めた子供の多くは3〜4年生で、勉強に疲れてしまう(burnout)傾向があるという報告もされています。低学年で成績のよかった繊細な性格の子供であったら、親を喜ばせるために4、5歳から塾で勉強して、ずっとクラスでもトップだったのに、3年生ぐらいから他の子供達に追い着かれて自信を失い、勉強嫌いになるということもあるかもしれません。(3、4年生ぐらいから抽象的思考の発達があるので、自然なことなのですが、子供は自分の能力が理由だと解釈するわけです。)専門家は、子供に必要以上の勉強を長時間させたり、特技を伸ばすためとは言え、子供に1つのことばかりに集中してやらせるより、バラエティに富んだ活動や経験をさせ、人間としてどう生きるかを教える方が優先されるべきであり、同時にそうすることによって、勉強嫌いやburnoutを防ぐことができるのではないかと見ています。

特に幼稚園から子供が現地校に通う予定になっている場合など、園児レベルの英語なら追い着けるかもしれないと、慌ててアルファベットや英単語を詰め込もうとしたり、アメリカの子供達の低学年向けだからと、子供個人の英語レベルに全くあっていない本ばかり選んでいることがあるかもしれません。(アメリカ人の子供達は、生まれてから英語を聴き続け、英語でやりとりしながら育っているため、読み書きはできなくても話し言葉として語彙がかなり増えており、絵本に結構文章が入っていても、97%の言葉を既に音で知っているため、読み聞かせができるのだという違いを忘れないで下さい。)子供が幼いうちの学習経験は数年後の子供の学習態度をも変えるものであり、これは使用言語が1言語でも2言語でも同じですから、子供が学習に疲れるような無理強いをしていないか、勉強嫌いの原因をつくっていないか、今いちど考えてみて下さい。

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