特殊教育法:親子の権利〔1〕
The Individuals with Disabilities Education Act (IDEA)アメリカでは特殊教育サポートを必要とする子供達にも他の子供達と同じように公立学校で教育を受ける権利が法で保証されています。特に特殊教育の柱となっているのは、Individuals with Disabilities Education Act(IDEA)というもので、『アメリカの公立学校方針』の4項目にあげた障害を持つ子供達を対象とし、子供達の教育経験が充実したものになるよう、必要に応じて、特殊通学手段、言語病理や心理に関するサービス、身体・作業療法、レクリエーション、リハビリテーション カウンセリング、社会福祉や医学治療のサービス等の学習活動に関連するサービスを学校側で供給することを定めています。障害を持つ子供は就学前の年齢(3〜5歳)でも適切な無料公立教育が施されますが、学習障害、精神遅滞…などといった障害種類は明確化されません。学校教育サービスの内容を決めるにあたり、特に次の4つが必ず尊重されなければならないとされています。
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- 子供の教育のニーズを測るための、差別のない多角的な評価
IDEAでは、障害の症状や教育サービス内容を決定するのに用いられるテストは、できるかぎり子供の第1言語で行なわなければならないとされ、目的にかなった確実なテストであること、テスト結果に文化的・人種的な偏向を生まないような評価手順を用いること、複数のスタッフで多角的な評価を行ない、教育サービス内容を決定することが定められています。
- 教育プログラム決定プロセスにおける親の参加
IDEAは、子供の教育プログラムを決定するにあたり、親に下記の権利を保証しています。
- 子供の最初の査定(教育ニーズの評価)開始前には親の承諾が必要であること。
- 子供の最初の特殊教育プログラム開始前には親の承諾が必要であること。
- 学校の評価が適切でないと思われる場合、学校外の査定を要求できること。
- 公的機関の評価が適切でないと法的審問(due-process hearing)で判断された場合、公的な費用で査定を要求できること。
- 子供の評価、クラス環境、教育プログラムを考える委員会に参加すること。
- 子供の教育記録を確認し、正確でなかったり、誤解をまねく内容だったり、子供のプライバシーや他の権利を侵すような情報があれば、異議を申し立てられること。
- 子供の教育記録にある情報のコピーを要求できること。
- 子供の登録内容、教育ニーズの評価、クラス環境の決定、又は、変更の学校側の提案や拒否、および、適切な無料公的教育供給の義務において、学校側の態度に疑問を感じたら、審問(hearing)を要求できること。
- できる限り制限のない環境での教育
IDEAでは、障害を持つ子供達ができるかぎり他の子供達と一緒に教育が受けられるような措置をとることが要求されており、連邦法規として学校側が制限の少ない(=普通教育学級活動からの隔離時間の少ない)普通教育学級内での教育サポートから最大限の家庭内・病院内教育プログラムまでの制限の大きさによるクラス環境のレベル分けを準備しておくことが命じられています。たとえば、7段階モデルの例だと
- 普通教育学級のみで、特別なサポートなし
- 普通教育学級のみで、専門家から先生にアドバイスがなされる
- ほとんど普通教育学級で、ニーズのある科目だけresource room(特殊教育教室)で指導を受ける
- ほとんど特殊教育学級で、サポートのいらない科目だけ普通教育学級で授業を受ける
- 普通教育学校の中の特殊教育学級のみ
- ニーズに合った特殊教育学校
- 家庭内、もしくは、病院内の教育プログラム(先生が訪問)
という具合です。
- 個人別教育プラン(Individualized Educational Plan: IEP)
IDEAでは、多角的な評価をもとに個人のニーズに合った教育プログラム、IEPを考案しなければならないとされており、親と専門家が協力して子供にとって適切な教育経験を考案し子供に供給するという形を推進しています。IEPには、子供の現在の作業能力、年間目標、短期指導目標、関連サービス、普通教育学級で過ごす割合、特殊教育サービスの開始・終了期日、毎年行なわれる評価が含まれます。子供が16歳になる前、および、その後は1年単位で、学校生活から成人生活への移行に関連するサービスの内容も含まねばならないとされています。