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「世界選手権疾走記録 7」


3月21日(水) スキップ(ペアフリー後半、女子予選A組)
製氷の後、第三グループのウォームアップが始まる。スロージャンプでパンちゃんが壁にぶつかっている。この組には珍しい…と思いつつも斜め後ろの人から話しかけられたので後ろを向いて話に応じる。
彼女の質問に答えようとしたとたんにダン!とものすごい音で観客がどよめく。振り向いてリンクを見るとフェンスの側で座り込んでいるのはなんとパンちゃん!!
別にどこかを傷めた様子もなくあっさり立ちあがってトン君と合流しているのだが、こうなると気が気でない。二回もぶつかって(泣)ああ〜パンちゃん大丈夫〜〜〜?

しかしこのペアに関しても心配は杞憂に終わった。ソロジャンプの位置が近すぎてトン君がバランスを崩すシーンがあったが、あれだけウォームアップで派手にミスして本番できめた所に二人の底力を見た。ショートと同様、フリーもそろそろサイズに合わなくなってきたのではないだろうか。
力をつけてきただけにフリーが3年連続似たような振付と衣装というのはあまりにもかわいそう(確認して初めて去年と同じプログラムだったことに気づいた私^^;)。中国連盟も雪ちゃん達並みとはいかなくてもそろそろ本腰を入れて彼女達の強化をしてほしいものである。ソルトレーク以降を担うペアの一つになるのだから。
来シーズンは目指せ、第四グループ進出!
(ペアは第三グループから上へ行くのが大変なのだ^^;)


第四グループのウォームアップにアビトボル組がいない。「ケガのため」というアナウンスが流れる。いつ?どっちが?棄権するなんてそんなにひどいケガを。ショートではそんな様子はなかったのに、こんな時にしてしまうなんて……。

そこから私を試合の世界に引き戻したのはトトミアニナ組の演技。スケートアメリカの放映を見た時には「正統派なだけにこの路線(ウェストサイドストーリー)はきつかったか」と思っていただけに余計に驚いた。試合の度にうまくなっていくような若手の勢いは本当にすごいしこの二人実は器用なのかもしれない。来シーズン来るよ、ここ!


最終グループのウォームアップ、この時の観客の盛り上がりはすごかったはずなのだがなぜか記憶がまったくない。相変わらず絶好調の雪ちゃんと宏博兄さんはまた衣装が変わっている。のんびりしすぎて午前の公開練習に間に合わなかったのは二人とも調子はいいだろうと安心していたこともある。
二人から少し視線をそらすとスロージャンプをしているベレズナヤ組が目に入った。雪ちゃん達とタイプが違うのがよくわかる。すごい距離…って飛びすぎ、またランディングの後流れるし危ない!壁に激突するかと冷や冷やしたのだがぎりぎり手前でセーフだった。ああ心臓に悪い〜〜。パンちゃんのスロージャンプのショックがまだ尾を引いているようだ。


その第一滑走のベレズナヤ組なのだが、観客の反応はよかったのだが私としてはどうも消化不良。ノーミスとはいえスケートカナダの方がよかったと思う。ショートといいどちらかが体調を崩しているのだろうか?
かといって彼女達への点数もこれまた疑問。第一滑走とはいえこれは低くないか?


アクセルがシングルになったサレー。しかしそこからは確実に滑っていく。それにしてもこの時の観客の盛り上がりはすごかった。序盤から異様なほどの盛り上がりでおかげで演技を見るのに集中できないほど。カナダ人のスケート選手に対する思い入れの強さを改めて感じた瞬間である。
この観客を前に滑りきった彼女達。ペルティエが泣いてるよ……。

今やカナダのフィギュアスケートでは一番成績を期待されている彼女達。ずっと明るく強気の姿勢を貫いていたが、この観客を前にした地元での世界選手権は大変だっただろう。ほっとしたのではないだろうか。
しかしこれは…難しい。どっちが上になるのか見当がつかない。結局サレー組が上になった。おお、抜いたか。
順位が出た瞬間観客が沸き上がったのもキス&クライがパニック状態になったのも去年と同じだが、その理由は正反対。さらに泣き崩れるペルティエ、「I can't believe it!!」と何度も叫ぶサレー。彼女達を見ながら去年と同じ事を考えた。そこから動ける?


二年連続地元選手の演技の余韻が残る空気の中滑る羽目になってしまったペトロワ組。しかし今の彼女達には空気を変えて自分達の演技に観客を引き込む力がない。ケガをしプログラムを変えるという試行錯誤が続いた今シーズン、競技としては四季に戻るのが今の時点でベストの選択だったのだろう。NHK杯で滑ったプログラムが好きだったのだが…。
また来シーズンに。
ニースで雪ちゃん達に勝ったあなた達にこの段階で留まられては困る。


雪ちゃん達がリンクに出る時、反対側の客席に中国国旗が見えた。世界選手権では初めての現象、しかも複数。嬉しい。ファイナルでも見てましたよ♪
オープニングの振り付けの部分であの宏博兄さんが一瞬だが演技をしていた。演技モード全開の雪ちゃんと対照的な表情が気になっていただけに、こんな小さな変化でもテンションが上がる。ショートのペアスピンは幻だったということで(^^;)
それ以外のエレメンツはいつもながらもう余裕。終盤のジャッジ前でのエッジを使ったポーズが初めて見るものになっている。本当にファイナルからテコ入れしたんだ、そこまでに。いける、これはいける、このプログラムが完成する!最後のリフトもスピードが落ちていなくてあまりの出来のよさにふっと不安になる。もう技はないけどまだ立たない、まだ騒がない!

…あちゃー……。

幸いすぐ立て直してフィニッシュには影響がなかった。いつものようにガッツポーズする雪ちゃん、頭を抱えてしばらくしてから思い出したようにガッツポーズする宏博兄さん。最後の最後までスタンディングオベーションしなくてよかった、宏博兄さん勢いあまったでしょう……(^^;)

キス&クライから引き上げる時に既に泣き顔だった雪ちゃん。
勝ちに来ていたからね……。



表彰式の準備をしている時の事。国旗が運ばれてきた時に会場がどっと盛り上がる。国旗に反応するあたりが日本と違う。

ほろ苦い気持ちで聞くカナダ国歌もある。
だが去年のような敗北感はない。

前回の観戦記でもぼんやりとは書いたが、私はこのフリーを勝負のためのプログラムとは思っていなかった。

ヘルシンキの世界選手権で彼女達は中国という民族性と独特のダイナミックさを最大限に生かした「ムーラン」で一気にメダリストになった。しかし世界チャンピオンになるには隙間が多すぎることは私でも躊躇せずに認めていた事。むしろ次のステップへ向けてどう変化していくのかを楽しみにしていた。
心待ちにしていた次のフリー、「Spirit of Spring」。しかし評判はいいものではなく、実際名古屋NHK杯で苦労している姿を見て早々に順位をあきらめ、そのかわり別の興味ができる。

このプログラムをどう消化してくるだろうか?

消化しきれずに自分達を見失ってしまうか、完璧に消化してステップアップするか。
ファンを名乗る割には意地の悪い興味ではあるが、ここが申&趙というペアのターニングポイントになると思って仕上がりを楽しみにしていたのだ。


2シーズン続けた結果、私の結論は後者である。このフリーは確かにムーランほどの問答無用の勢いはないが、彼女達がもつダイナミックさが失われたわけではない。それを生かしつつよりきめの細かいもの、大河ドラマのような他のペアにはない壮大な世界を持つものになったのだ。
隙間がほとんど埋まったことが、地道に隙間を埋めようとしてそれをやり遂げた彼女達のファンであることが嬉しいし、今までになく誇りに思う。久しぶりにプレゼンテーションで思いきり減点を食らう結果になってしまったが(あ、ファイナルもか)、この結果で彼女達が壁にぶつからない事を祈る。
2年間この路線でやってきたことは間違っていないのだから。バンクーバーを見た今、自信を持って言える。

表彰台の段差は以前ほど大きくはない。もう少しなのだ。
観客はわかっている。



しかしこれは選手がファンに言われて嬉しい言葉ではないだろう。もう少しだから余計に悔しいのだから。
嫌だろうと思っていても考えを変えられない私はつくづくいいファンではない……。



スケーターはそろそろ表彰台から降りる様子。この時サレーがこっちの方を向いて「ねえねえ、盛り上がってー!」というようなジェスチャーをした。はいはい、わざわざそんなことしなくても盛り上がりますって(笑)。
ウィニングランで選手が観客に花束を投げるというのは日本独特の光景らしい。確かにサレー組は投げない方が賢明だ。この観客に彼女達の花束争奪戦をさせたらかなり恐い展開になりそうだから。
と思っていたらコーナーを回ってジャッジと反対側の席にシハルリーゼが投げている。目の前を通り過ぎた時、雪ちゃんこっちを見た?雪ちゃんの手から―――

ゴンッ。
私の斜め右前の椅子の背にぶつかって花束が床に落ちている。Kが取りにいく。

え? くれるの?
私に??

ちょっと待て、女性スケーターがあの花束を投げるのは結構至難の技。実は後ろの席にあげたい人がいたのではと思って見てみたのだが、それらしき中国人の姿はない。周りの席の人が「It’s yours!」と言ってくれたのでありがたくいただくことにする。

雪ちゃんありがと――――っ(泣)!!!


この後の私の騒ぎっぷりについては書かないことにする。
応援している選手からのレスがこんなに嬉しいものとは知らなかった……。



ここで一日を締めくくると非常に美しいのだが、そうはいかない。女子予選のもう一つのグループが残っている。おおかたこの変則的なスケジュールはゴールデンタイムにペアフリーを生中継したい地元放送局の意向なのだろう(どう放映されたのかは知りません)。観客としては勝負の決着がついた余韻に浸りながら宿に帰りたかったのだが。
しかし途中でペアフリーが入ることで中だるみせずに女子予選が見られるという長所もあることはある。

そう、女子予選。
ふふふふふふ。

大会三日目、女子予選とペアフリー。この日はペアの優勝者が決まるという一つの山場の他にもう一つの山場がある。一番の長丁場なのだ。
女子予選では47人がフリーを滑り、ペアで20組がフリーを滑る。単純計算すると
4分(女子フリー)×47+4分30秒(ペアフリー)×20=188分+90分=278分、4時間半。これにウォームアップや製氷、点数調整時間などもろもろの要素が加わり、朝から晩までスケート観戦三昧という状態になる。聞いて天国見て地獄…ではないが、実際にするとかなりの体力勝負なのだ。
鈴鹿耐久レースを楽しむノリがわかるようになるとは思わなかった。


それにしてもエルビス、ペアフリーは絶対見に来ると思っていたのだが。近い時間に公開練習があったから間に合わなかったのかな?
まあ逆に助かったわ…と気を抜いていたら女子予選が始まる頃にしっかりメディアブースにいた(^^;)こっちのグループはカナダの選手がいないので、たとえペアフリーに間に合っても速攻帰ると思っていたのに。耐久レースに思わぬゲストが出現♪
しかしメディアブースにちゃっかり彼女を連れ込もとい!メディアブースで堂々と若い女性と一緒に観戦するあたり、結構やる人だったのね(笑)。


エルビスがいるおかげで普段よりメディアブースを見る機会が多くなった。すると初めて気づくことが出てくる。
メディアブースはリンクのショートサイドで選手が控えている所の真後ろにあり、ジャッジに近い方からドイツ、フランス、日本、アメリカ、カナダの順で並んでいる。ペアフリーが終わったせいか女子予選が始まっても終了ムードでコメンテーターどころかほとんど人がいないブースもある。
他のブースなら問題ないが、アメリカ!自分の国の選手が全部こっちのグループにいるのにメディアブースを空っぽにしていていいのか!? ヒューズの時にはほとんど人がいなかったと思う。


第二グループ、ウォームアップの終盤でミシェルに何かトラブルが起こった様子。レフェリーに何か言い、コーチに足を示している。何、靴?足?

Christine Lee(会場のアナウンスは香港・チャイナ)
ウォームアップでは場慣れしていなさそうな様子が目だった彼女。しかし前半でトリプル(多分トウ)がきまったあたりから表情がだんだん変わり、終盤では弾けた笑顔で滑っていた。終わってからも嬉しそうでリンクサイドでコーチと抱き合っている。会心の出来だったのだろう。
この時キス&クライから少し離れた所で韓国のジャージを着てカメラを持った女の子の姿が見えた。あのおでこ具合は女子シングルのBit-Naちゃん?キス&クライの写真を撮っているようで、香港の選手が手を振っている。あなた達知り合い?
ということはあなた(香港の選手)もMariposa?もしそうだとしたら、ダグコーチ最近アジアづいてますね(笑)。
(後日確認した所違っていた)


ミシェルは本番で名前をコールされてもなかなか出てこない。リンクに降りても演技の体勢に入らずに周りをぐるぐるぐるぐる滑っている。特に足を気にしている様子はないが…急遽靴を換えることになってしまい、足慣らしをしているのだろうか?
大丈夫?

しかし位置へ向かってからはスイッチがカチッと切り替わったようだった。トラブルを切り抜けたというよりトラブルがあったことを忘れさせる演技。GPシリーズとは別人。


第二グループが終わった所でエルビスが帰っていった。ばいばーいおやすみ、また明日ね(^o^)/"今日は早く寝るんだよ〜♪ (←何か違う)


ファイナルはインフルエンザのために精彩がなかったブティルスカヤだが、この時の演技はその時より悪かった。ジャンプを連続ミスし、観客にも動揺が現れる。
点数が出るまでの間に「We love you, Maria!」の声。観客が贈ることができる精一杯の好意である。

Carina Chen(台湾)
ブティルスカヤの動揺がまだ残っていた状態で滑ることになった彼女。そのため前半はほとんど印象がない(ごめんね^^;)。中盤から後半あたりで実は確実にジャンプをきめていっていることに気がついた。動きも軽やかだし、予選通るだろう。

どうも今回のアジア女子スケーターは予選通過かどうかを気にさせる人が多い。ジャンプを確実に跳んでいるということもあるし、滑りから感じるものが違う。「のびのびと滑っていた。力を出しきれてよかった。」と書くと相手にムッとされそうなモチベーションを感じるのだ。
彼女達の大半はジュニアでも出場できる若いスケーターである。それぞれの連盟でフィギュアスケートへの取り組み方が変わってきているのかもしれない。

第三グループが終わると同時に潮が引いていくように観客が帰っていく。女子予選の間だんだん観客席がまばらになっていくのは感じてはいたが、ここまでいっぺんに帰るあたり。
見に来ている観客の全てがバンクーバーのダウンタウンに宿を取っているわけではない。私だって会場がなみはやドームでこのスケジュールだと終電を計算しなければいけないので気持ちはわかるが、ここまであからさまに引き揚げられると日本人としては内心おもしろくない。
明日リザルト見てすぐりん見なかったことを後悔するんだな。

観客だけではなくメディアブースもほとんど空っぽになっている中で日本のメディアブースはインカムをつけている二人が残っている。残っていてくれないと困るのだが、それでもほとんど出入りがなくずっとブースにつめているのは皆勤賞ものである。なるほど「日本人は勤勉」という日本人論が出るわけか。


第四グループのウォームアップではすぐりんの滑りが目立つ。四大陸でも優勝したし、それだけの存在になったことを改めて認識。ずっとルッツをチェックしていた。
本番では二度目のルッツとエッジジャンプを一つミスしたぐらい。まずまずといったところだろうか。

Marta Andrade(スペイン)
女子のベテラン選手といえばブティルスカヤやマリニナが思い浮かぶが、世界選手権に出場している最高齢の女子シングル選手は実は3年連続彼女。だが容姿、演技共に実年齢より10歳近く若く見える。若く見えるのはいいのだが、ジュニアに見える水色や黄色の衣装はいくらなんでもまずいだろうと思っていた。トレーニングの環境があまりよくないのだろう。
しかし今年は薄紫の衣装で実年齢マイナス6−7歳といったところ。演技に流れがあるし、ステップも以前より凝っている。これだけ何もかも変わるなんて、コーチを変えたのだろうか?しかもジャンプを転んでいない。トリプルの数まではチェックしていないが、このまま行くと予選通るのでは…と思っていたら本当に通った。
おめでとう。今までで一番いい成績ではないだろうか。


これにて女子予選A組が終了。最後まで観戦した皆さんお疲れさまでした(−−)。


ここまで長時間観戦していると空腹も感じなくなる。しかし何も食べないとまずいので、軽いものを目指してサンドイッチのお店に入る。入るなり「コンバンハー、イラッシャイマセー」と店員の兄ちゃん。中国語や韓国語の表示がある店があるこの界隈で一目で日本人と見抜くとは、なかなかやるな。
この兄ちゃん、メニューを持って来ていきなり「『Enjoy youself』って日本語で何て言うの?」11時を過ぎても陽気な人だ。しばらく考えたが「ごゆっくり」と答えておく。

疲れているのに花束を見ると顔がにやける状態で、宿に帰ってからもテンションがやたらに高い。ドライフラワーにならないうちに写真を撮っておこうと思いたち、いすを持って来てあれこれセットする。
こういう事を始めると凝りだして止まらなくなる性分。中国国旗まで持ち出してあれこれやっているうちに日付が変わった。(→カメラが斜めになっていた^^;)

ハッピーバースディ、エルビース!
と言いだしたのはK。

明日は誕生日なんだよねえ……。


しかし誕生日に地元で男子フリーだなんて、なんていう舞台の整い方なんだろう。
狙いすぎやカナダ連盟、一週間日程ずらせ!!(日程を決めるのはISU?)

(続く)

追記:
・ああだこうだと書いている割に穴だらけの観戦記、男子ショートのアプトの記述で指摘を受けました。始めのコンビネーションはクワドではなくアクセル、25才でなく24才だそうです。ありがとうございます、この場で訂正します。

・雪ちゃんのアルファベット表記は「Xue Shen」。「Sh」と「X」とで書き分けているあたり中国語はシャ行の発音に違いがあるのでしょうね。
「謝謝、雪(しぇしぇ、しゅぇ)!」、発音難しそう……(^^;)

・写真でわかるかと思いますが、黄色のバラの周りに椿の葉をグリーンに使った極めてシンプルな花束です。カナダはこうなのか…と思っていたのですが、翌日の男子以降の花束は全て複数の種類の花を使った色とりどりのものだったのです。ひどい、どうしてペアだけ手抜きなの!?

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