| 「世界選手権疾走記録13 」 |
| 3月27日(月)
ゲームオーバー(帰国) 目が覚めた一瞬家にいるような気がした。 バンクーバーに来て以来これだけ熟睡したのは初めてだ。昨夜野菜たっぷりの晩ごはんをしっかり食べられたのがよかったのか…まさか今まで眠りが浅かったのは時差ボケのせいで、今頃になってなじんできたなんてことはないよなあ。 心なしか具合がよくなったような気がする。さすが医食同源、中華料理って偉大。 でもない。げほげほげほっ。 この体調であの飛行機に乗っていなければいけないと思うと気が重くなる。ちゃんと家へ帰れるんだろうか。帰って会社行って、写真現像して、へなCHOCOにレポートを…書けるのだろうか?この一週間飛ばしまくって騒ぎまくったのはいいが、何を書こうかと考えると頭が真っ白になる。 空っぽになっている。心も体も。 悔いがないわけではないが、今さらどうしようもない。 帰らなければ。帰りたくないと口走る前に。 ユースから空港へは空港バスであっさり30分ほどで行くことができるのだが、市バスを乗り継いで行くこともできるらしい。ユースにあるバスの路線図で番号をチェックしたところ、所要時間は1時間半。微妙な時間だがやってみたい。げほっ。 郵便物を出したいKと空港で合流することにしてバスに乗った。しかし停留所を2つ通り過ぎたところで地図では右に曲がるところを左に曲がっていく。ぎゃー、間違えた!即行バスを降り、トランクを転がしながらスタート地点へ後戻り。げほげほげほげほ。 さすがに懲りたので大人しく空港バスに乗ることにする。げほっ。 入口から右側のアメリカの航空会社のチェックインカウンターはガラガラにすいているのに、日本便のチェックインカウンターには長い列が並んでいる。ひえー、空港バスで早めに来ておいて正解だった。 そのうち少し後の東京行きに乗る人もやってきて、私の後ろにさらに列ができる。中には知った顔もちらほらと。みなさんお疲れさまでした〜(^o^)/" 暇つぶしに他のカウンターを見物する。誰か選手いるかな〜?隣は中国の航空会社らしく、待っている人の列がほとんどない。そのうち学生の年齢らしき集団が目についた。この時季の日本人なら卒業旅行と流す所だが、中国人でこんな若者の集団は珍しい。それにあの老け顔の男性に見覚えがある。ひょっとして。 あれは。 あれは! チーム・チャイナ!! 決め手になった男性はXianmingさんだったが、よく見ると雪ちゃんと宏博兄さん以外全員いる。二人はこの後カナダのツアー、Skate the Nationに出るので別行動なのだろう。あちらはチェックインの最中のようで、運飛が交渉役で張民がそばについている。他のメンバーは暇つぶしモード。 こうなると待っている間のイライラもだるさも吹っ飛ぶ。ずっと彼らを見ていたら「何見てるの?」と空港の係員に話しかけられてしまった。まさか中国人のフィギュアスケーターがいるとは言えず、「いやあっちのカウンターが空いているからうらやましくて」とごまかす(^^;)「あっちはグループチェックインだから。できるだけ早くするからもうちょっと待っててね」と係員。 この時初めて私服姿の彼らを見たのだが、運飛がROOTSの赤いトレーナーを着ているのが目立っていた。 そういえば初日の公開練習で一人だけ違うタイプのTシャツ(ROUTE66)を着ていた運飛。予選のトラブルでのジャッジと余裕のあるやりとりぶりや演技が終わってから感情を爆発させる観客へのあのアピールぶり。実は帰国子女で英語がペラペラで、NBAやNHLのファンだったりバリバリの洋楽ファンだったりと中国ではちょっと珍しいタイプだったりしたらおもしろい。 ニースで本田君も着ていたりとおしゃれな人にはROOTSは外せないアイテムのようだから、「カナダへ行ったらROOTSで買い物する!」と行く前から決めていて、試合が終わってからホテルの近くのROOTSで買い物して、気に行ったからそのまま着て帰るんだよ〜と暇にまかせて話を作って遊ぶ。 そんなこんなであちらはチェックインがすんだようで中へ入っていった。ちなみにこの時運飛はROOTSのショッピングバッグを持っていた。わかりやすい〜(笑) 中へ入る時に空港使用料(?)を払うのだが、行き先によって値段が違う。ブリティッシュコロンビア州は5ドル、それ以外のカナダとアメリカは10ドル、それ以外は15ドル。 エルビスはトロントの実家とアストン(アメリカ)の地元リンクを行ったり来たりの生活らしいが、どっちに帰るんだろう。まあどっちにしても10ドル圏か…。 海外旅行の宿題の最終科目は免税店でアルコールの買い物。父親には適当な高級酒、母親にはアイスワイン…とアイスワインの棚を見た先に肩まで髪の毛をおろしたほっそりした見覚えのある女の子が。パ、パンちゃん☆と関係者の女性。 こうなるとアイスワインを取りに行くことができず、彼女達が店を出て行くまで固まっていたのは言うまでもない。ゲートで待っている間にももう一度彼女を見た。どうも出発ゲートが近かったらしい。 しかしとことん中国運がよかった今回の観戦。この半分でもエルビス運に回せたらねえ……。 順番が前後するが、免税店の近くにまたROOTSがあった。ROOTSはエルビスのスポンサーの一つで、ポスターもあったりするらしい。少し中をのぞいてみたが、さすがにエルビスのポスターはなかった。そのかわり別の男性の大きなパネルが飾ってある。 顔がモデルらしくないのでおそらくスポーツ選手だろう。下に説明文があるが字が小さくて何の選手か全くわからない。しかしその中で目を惹いたフレーズがあった。 Olympic Gold Medalist――― この称号を目指すシーズンがすぐに始まる。 飛行機の席は真ん中の列。いつもなら離陸直前の風景が見られないと残念がるところだが、今回は別れを惜しまないから問題ない。 もう一度カナダに行くのだから。行かなければ。 体調を崩して見られなかった試合があるせいだろうか。 エルビスにサインをねだるカナディアンにブチ切れてそっぽを向いたせいだろうか。 せっかくエルビスの生まれ育ったカナダに来たのに、肝心なところで目をそらせてしまったような後ろめたさがあるのだ。 それが何かはわからない。これという悪いことをしたわけではない。誰に責められることではない。まあ今突き詰めて考えなくても、観戦記を書いていけばそれが何かわかるだろう。最低限あのハッピーバースディのシーンは書けるから。 もう一度この国に来よう。もう一度カナダで滑るエルビスを見よう。 今度は目をそらさずに。 げほげほげほげほっ。早く帰ってとにかく風邪治そう。 (結局完治するまでに一ヶ月かかった) (終わり) (12に戻る) |
あとがき:
ははははは、結局書いてるじゃないかよ。まあ書き出したら止まらなくなるだろうとは思っていましたが。
「あーた長野が終わっているのに、今さらバンクーバーなんて誰が読むんだよ」とツッコミを入れつつ結局最後まで書き上げてしまいました。よるさん毎年すみません(^^;)いやこっちは意地も入りつつ書きたくて書いているのですが。
ここまできたらソルトレークシティーオリンピック観戦記も書かせてください。男子とペアフリーがほとんど放映されたBSの普及率を考えると書く意味がないような気がしますが、3年間ここまで書きなぐってしまうとエルビスのアマチュア最後の試合も書いておかないと気がすまなくなってきました。
付き合って読んでやろうという根性の据わった方がいらしたら、よろしくお願いします。まあ世界選手権に比べて試合の数が少ないので、ワシントンまでには終われるでしょう(^^;)って言っていいのか、私?