Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!


「世界選手権騒動記録15」


おことわり:観戦記というより愚痴ですね……スケートネタはありませんのであしからず。


記録 15(4月3日(月)) 帰国

ホテルのロビーには各国のチームに対する飛行機の便と時間、それに対応するチェックアウト時間の一覧が張り出されてある。いいんかいな。まあ大会側やホテル側はそうしておいた方が楽なのだろう。誰か私と似たような時間帯のチームいるかな〜?と昨日少し見てみたのだが(おいおい)、読みにくくて何も把握できなかった。ま、昨日の私に情報収集など無理だったのだが。
シェリルの出発は私より早くて朝の6時過ぎ、カナダ勢とほぼ同じ時間なのだそう。「見送ってくれるの?」と不思議そうだったが、あなたの見送りせずに何をするというの。けじめはつけるしそれにトランク3つ分の荷物なんだから一人でいっぺんには運べないでしょう。荷物を置きっぱなしにしないというのは海外旅行の鉄則だというのに何を考えているんだか。そもそも一週間の旅行で自分でさばききれない量の荷物を持ってくるその心理がわからない。投げ物もないのに。


ロビーでダイアナ・ポスが誰かと話をしている。リンクで見るより長身でぴったりした白いセーターを着ていて、丈が短くておへそが出ている。衣装は趣味だったのね^^;
アンソニー・リウも誰かのお見送りの様子。NHK杯、四大陸の公開練習と何も考えずに視線をやった先にオフリンクの彼を見つけるという偶然が続いた今シーズン。ちょっとうれしい。


タクシーの運転手と私と3人がかりで荷物を積みこみ、彼女は帰っていった。



さよならシェリル。
あなたは無邪気なのかもしれない。私が神経質過ぎるのかもしれない。
けれど「エルビスがアマチュアでいるのがstrangeだわ。エルビスが引退すればベンがカナダでもっと評価されるのに。世界に出るチャンスが増えるのに。」とエルビスのファンである私の前で口走ったあなたには二度と会いたくない。
初対面でエルビスのファンだと名乗ったあなたがこれから先も他のスケートファンに対してそう名乗り続けるのかと思うとぞっとする。引退を願っておいてどこがファンだというのか。
私があの言葉に怒り狂ってもへらへら笑っていたあなたは自分の言葉の重さをわかっていないのだろう。自分の好きな選手のためにライバルの引退を願う、スポーツのファンとして一番言ってはならないことを言ったということが。それとも私が怒り狂う様子を見て楽しんでいたのだろうか?
ならばその調子で固有名詞を変えた同じ事を言い続けて他のスケートファンにどんどん敵を作って孤立するがいい。それが道義知らずのあなたにふさわしい末路だ。



昨日トータル10時間以上寝て、まだ早朝だというのにもう疲れている。柔らかい光が夕方のように感じさせるのだ。
部屋に帰って今までになくホッとして気がついた。この一週間、何かとずっと戦っていたのかもしれない。常にピリピリして身構えていたような。
戦う対象がなくなった今、ホッとすると同時に疲労と空しさが同時にやってくる。安らぎが大きい分、戦いで消耗したものの大きさとしょうもないことにエネルギーを使った時間の無駄の大きさを痛感させられる。


私は………


この一週間いったい何をしていたのだろう?見たと信じたものが、伝えようと心にとめていたものが急に色あせて価値のないものに思えてどんどん崩れていく。これは好きなスケーターの成績に左右される問題ではない。自分自身の姿勢の問題なのだ。
これでは帰っても観戦記が書けない。いや、書くことはできるが書いてもマイナスの感情に満ちた、読んで気分が不快になるものになる。それを避けると演技に対するコメントだけを書いた無機質なものに。どう転んでもヘルシンキの時のように「聞いて聞いてー!」と内側から湧き上がるものがない。
これでは帰れない。「いってらっしゃい」と言ってくれた人に胸を張って報告できるものがない……


しかし帰らずにすまされるはずがない。私が住んでいるのは日本だ。
試合初日の公開練習を思い出させる早朝の柔らかい光。あの時と同じように窓から練習用リンクが見えるが、滑っているのは地元の女の子達。世界選手権はもう終わっている。
がんばれ、未来のフランス代表候補。いつかどこかの国際試合で会えたらいいね。


バスの時間を調べるのも面倒くさいのでホテルからタクシーで空港に行くことにする。乗るなり運転手が「どっちのターミナルに行くの?」。しまったターミナルが2つあるのは知ってたけど、どっちなのかチェックしてない。ルフトハンザに乗ることだけ言うと「OK.」とあっさり返ってくる。
行きのバスとは違い、少し海から離れた道を通っていく。違った風景が見えるのでタクシーにしておいてよかった。窓から線路と住宅地が見える。なるほど行きの飛行機で話をした人はこういう所に住んでいるのか。モナコへ電車で行っていればこういう場所も見られたのだろう。一週間何を見てきたのか…という思いがまたわいてくるが、考えないことにする。
空港バスの停留所に来てもタクシーがまだ止まらない。「ルフトハンザに一番近い入り口まで行くよ」とのこと。心が弱っているだけにこんなことがものすごく嬉しい。頭の中でチップを5フランアップ、ニースで最後に会う人がいい人でよかった。


それでも出国ゲートをくぐるのが辛い。いつもは日常から離れた旅行中にエネルギーを充填して、帰る時には「終わった終わった、さあ帰るぞー♪」というノリになるのに。こんな旅の終わりは初めてだ。

気を紛らわせるために買い物に走る。ここぞとばかりお土産を買い込む。ああ、これ市場で見たな、でも市場の方が半分ぐらい安いんだよなー…と思いつつ。ニースの名物にこういうのがあると知ったのだ。何も見なかったわけではない。
ワインの免税店を見るまでフランスがワインの国というのをすっかり忘れていた。ここでヤグディンのファンの友人と1、2フィニッシュのお祝いをしようと思いつく。2000年限定のシャンパンも考えたが、ここはむしろワインを空けてじっくり飲み明かしたい。

帰ろう。帰る所があるから旅にも出られる。


…と、やっと帰る態勢が整った所にアナウンス。
天候が悪いのでフランクフルト行きの飛行機が遅れるという。

は?


最後の最後までこう来るか―――!?


笑った。ここで観戦記のタイトルが決まった。
今回はそういう旅行だったのだ。こーなったらとことんネタにしてやる、書いてやる。読んでいる人がおもしろくなかろうが私の知ったことじゃない(よるさんごめんなさい)!これで元気が完全に回復したのだから妙なものである。
そしてこの遅れは悪いことばかりではなかった。同じ飛行機に関係者の方が乗ることになっていて、待っている間に少しお話ができたのだ。ラッキー☆元は取れた。


とはいえさすがに待ちくたびれて、フランクフルトまでの飛行機の中はほとんど記憶がない。あ、軽食は食べたっけ。


当然フランクフルトでの乗り継ぎ便に間に合わず、別の便を手配してもらう。降りてすぐチケットを受け取ると、「4:30にカウンター〇〇でチェックインしてくださいね」とのこと。チェックインまでまだ2時間ある。何して時間つぶそう?
まあとりあえずカウンターの場所だけチェックしようとスーツケースを転がしていくと…

空港の入り口に行きついてしまった。電車と近距離バスの案内なんて出ていたりする。おーい、外に出ちゃうよー?何も審査受けてないよー?密入国にならないのー?ヨーロッパ間の移動ってこんな気楽なものなんかいな。
フランクフルトの街をうろついて観戦記のおまけ編でも作ろうかと思ったが、あいにく地図を持っていないししかもスーツケースを持っている。スーツケースを預けられるチェックインから搭乗までは街をうろつけるほど時間がないので、空港の中でおとなしくメディアインフォメーションを読むことにする。
あら、キュヒュン君北京でも練習してるのね。


一人旅はこういう時の時間つぶしが難しい。メディアインフォメーションを読んでしまった後の暇つぶしといえば…
原稿書きしかないでしょう(しかないのか?)


フランクフルトでミールクーポンをもらったが、おなかがすいていない私はごはんより観戦記を書くための机がほしい。カフェでそのクーポンは使えないので結局フランをマルクに替えてカフェオレとケーキを注文する。わーい、ドイツのケーキだ♪
そういえばフランスで甘いものを食べずじまいだったなあ。

旅路の途中、空港のカフェで筆をしたためる女が一人…と書くとかっこいいが、それが観戦記というのは色気も何もあったものではない。またこの時書いていたのがペアフリーだからものすごく深刻な顔をしていたと思う(←書いている間文章と同じ表情になる人)。周りに日本人がいなくてよかった(笑)。
と思いきや、カウンターの方にツアーの団体さんが並んで立ち往生している。ここのカフェは表示が全てドイツ語で、しかも「ケーキ」や「ホットドッグ」としか書いていない。どれがいいかは横の品を見て決めないといけなくて、受け取りと支払いはその横でしないといけないのだ。説明もないのでややこしいことこの上ない。立ち往生するのわかるわ。
先にテーブルで二人でコーヒーを飲んでいた添乗員が気がついてカウンターの方へフォローをしに行く。空港での自由時間なのにおちおちコーヒーも飲んでいられない…添乗員は大変だ。


乗り換え便はANAだった。同じエコノミーなのにルフトハンザよりやけにせせこましく思えて、これで一気にテンションが落ちる。


行ったことを後悔しているのではない。
どうだったと訊かれればもちろん行ってよかったのだ。なにせエルビスの復活をこの目で見ることができたのだから。予想通りオリンピックから泣けなかった分をまとめて泣かせていただいたし。
何かステージが変わったような。2年がかりでケガから開放されて白紙状態になった彼がこれから先どう進んでいくのか楽しみでしかたがない。

そうそう、中国男子も3枠獲ってしまった。去年「下手したら…」とは思ったが、それほどシリアスに考えていたわけではない。まあ書いても応援人バカで許される範囲だろうと思っていただけに、本当に獲ってしまったのには驚いた。だって男子の3枠って言ったらロシアと同じだよ!?


しかしそれも下手すると別世界の事に思える。ヘルシンキは行って心が癒されたが、今回のニースは戦いすぎて疲れた。もう少し時間が経てば「刺激的な日々だった」と振り返ることもできるだろうが、今は無理。


飛行機だから水平方向にもかなりのスピードで進んでいるはずなのだが、シベリア上空を飛んでいるので延々と同じ景色が続く。ここに住んでいる人はどんな忍耐力があるんだろう。
今すぐ帰りたい。幽体離脱して魂だけでも先に。万が一この飛行機が落ちたとしても、魂だけは絶対に日本に帰る。まあ幽体離脱する能力があったとしても今の私には体力がないだろう。なにせ眠ることもできないのだから。



やっと緑の山が見えてきた。もう日本だ。
帰ったらすぐへなCHOCO見よう…

(終わり)

(14に戻る)

あとがき:だらだら長い観戦記を読んで下さって本当にありがとうございました。
特に何も言わずに載せて下さっているよるさんにあらためて感謝します。

それにしても「潜入」「騒動」と物騒な題名が続くこの観戦記、次回の世界選手権はエルビスが生まれ育ったカナダであるんですから、「友情」とか「感動」といった言葉が題名になるようにしたいものです。(←書く気なんかい)

(1に戻る)