「メンデルスゾーン男声合唱曲」解説
メンデルスゾーンはドイツ・ロマン派の巨匠であるが、内的感情をあからさまに表
現するロマン派独特の作風とは異なり、建築物を作り上げるような古典派への傾倒を
持ち味としている。したがって、音楽は官能的というよりは端正で、ときに知的な印
象さえ受ける(彼の評価が二分するところでもある)。彼は合唱曲も多く書いており、
今回は、その中からリーダーターフェル(卓を囲んで歌うの意、男声合唱が発展する
原動力となった19世紀初頭のドイツで生まれた音楽スタイルの一つ)のために書かれ
た世俗曲から6つを選んだ。仲間が集まって食を共にし、乾杯して合唱するという庶
民的雰囲気の中にメンデルスゾーンの格調高さがにじみ出ているところに最大の魅力
が感じられる。まぎれもなく傑出した合唱作品である。
1.楽しきさすらい人(作品75の1) 自然の美しさを讃えて神への感謝を歌っている。
2.乾杯の歌(作品75の3) 酒場の食卓を囲んで男たちが気のおけない雰囲気で好
き放題言い合っている様。酔っぱらいといえども何か気品がただよっている。
3.小夜曲(作品75の2) 愛しい相手(女性)を思い描いた我々(男性)にしか歌
えない甘美な曲。男声合唱だけがもつ独特のハーモニーが聴きどころ。
4.ジプシーの歌(作品120の4) 真っ暗で不気味な夜の森、しかし、ジプシーには
恐いものはない。何もかもが自分の手のひらの上の出来事のようにあやつられるのだ
と歌う。
5.狩人の別れ(作品50の2) 狩猟を終えた人々が感謝の意をもって森をたたえる
歌。メンデルスゾーンの合唱曲の中では最もよく知られている一つである。
6.喜び求めて果てることなく(作品番号なし) 「この世に永続する喜びはないの
か?」答えは、それを求め続けることこそが喜びであると歌っている。ソロカルテッ
トとのかけ合いの中で様々なバリエーションをもって曲が進行する。
メンデルスゾーン訳詞
楽しきさすらい人
人は神の恵みにより真の喜びを与えられる
人は広い世界へと飛び出し
新鮮な驚きを体で感じるのだ
丘に、森に、川に、野に。
山泉から水は流れ
ひばりは楽しく歌う
自分も歌わずにいられようか?
澄んだ声に心はずませて
全てのものは神の意のままにある
川、ひばり、森、野、
それに天も地も
そして(神は)きっと私の望みをかなえてくれる!
乾杯の歌
人は酔っぱらっていないとき
悪いことを好む、
だがいったん酒を飲み始めると
何が良いかがわかるのさ。
(ってえらそうにいったけど)グラスを傾けながら
ただ好き勝手に言ってるだけなんだ
ハーフィス注)よ、教えてくれ
おまえはどうやって賢く生きたんだ。
おれははっきりとこう思っている
飲めない奴には恋はできないと。
だからって酔っぱらいども、
自慢するなよ
恋をしない奴に酔っぱらう資格がないなんて。
注)ハーフィス ペルシアの叙情詩人。近代ペルシア文学の最高峰とされ
賢人として知られる。
小夜曲
おやすみ、愛しい人よ
今、地上のものは静まりかえった!
空には金色の星が輝き
羊飼いはみんなの番をしている。
(琴の音は)木に枝にからみつき
おまえのひっそりとした寝床へと届く
金の梯子を昇るように
上がっては入り、また下りてくる。
どうかこの心地よい響きを運んでおくれ
なまめかしく動く風よ
戸をくぐり、壁をぬけて
夢見る愛しいあの子が聞き取れるように。
ジプシーの歌
霧深く、雪深く、
不気味な森の寒い夜。
飢えた狼の声が聴こえる
ふくろうの騒ぎ声が聴こえる
ホー、ホー、ホー!
私は一匹の猫を仕留めた
魔女アンが飼う黒猫を
すると狼が七匹私に近づいてくる
牝狼だ。
ホー、ホー、ホー!
私はその七匹をよく知っている
アン、バビー、ウルシー、カーテ
リーゼ、エヴィ、ベット
輪になって私に迫ってくる。
ホー、ホー、ホー!
私は彼等の名を呼ぶ
アンはどこだ?ベットはどこにいる?
すると狼は驚いて震えだし
ちりじりに逃げていく。
ホー、ホー、ホー!
狩人の別れ
美しき森よ、
誰がお前をそんなにも崇高につくられたのだ?
私は主を褒め称えよう。
声の響きわたるかぎりに!
さようなら!美しき森よ!
深く入り組んだ森の中
鹿が孤独に草を食んでいる
我等は角笛を吹きながら去ってゆく
その響きは森にこだまする。
さようなら!美しき森よ!
我等は静かな森に誓う
尊敬の念を忘れず
永遠に忠実であり続けることを
森に歌声が響きわたるかぎり!
さようなら!美しき祖国の森よ!
神はお前を守っている!
喜び求めて果てることなく
グラスの酒の心にしみる味
だがあの子は行ってしまった。
キスはこの酒よりずっと美味い
だがその味もやがて消えてゆく。
胸にせまる甘い歌声
それは切なく苦しいもの。
しかし何と急いで
薄れて消えていくのか。
この世に長く続く喜びはないのか?
グラスを重ねよう!
キスを重ね、歌い続けよう!
喜び求めて果てることなく。
ディズニー名曲集 解説
Walt Disney (1901〜1966)は、1928年 世界初のトーキー(音声同調)
アニメーション映画、蒸気船ウィリー号の公開で大成功を収め、その後シリー・シン
フォニー(音楽をテーマとしたアニメーション映画)シリーズを製作。花と木(19
32)三匹の子ぶた(1933)などの傑作を生み、音楽が単なるムード作りではな
く、物語を語り、個性を表現する、いわゆる「映画音楽」を生み出しました。本日は
数多くのディズニー作品の中からWalt Disney自身が製作に関わった映画より6曲を
演奏致します。
1.Alice In Wonderland (不思議の国のアリス)
−不思議の国のアリスより−(1951年)
ルイス・キャロル原作のアリスの物語を題材にした映画を作りたいというディズ
ニーの長年の願いがかなった作品。幻想的な世界を狙っています。
2.Love Is a Song (愛の歌声)
−バンビより−(1942年)
森で育つ鹿の物語のテーマソング。映画ではこの曲で始まりこの曲で終わります。
3.I Bring You a Song (あなたに歌を)
−バンビより−(1942年)
青年になった鹿のバンビが愛し合う雌鹿ファリーンと森の中を歩くシーンに使われ
た曲です。
4.Heigh-Ho (ハイホー)
−白雪姫より−(1937年)
初の長編アニメを成功させる為、作詞家ラリー・モリー、作曲家フランク・チャー
チルが25曲作り、その中の8曲だけが採用されました。ハイホーはその中の一曲で
す。
5.When You Wish Upon A Star (星に願いを)
−ピノキオより−(1940年)
ピノキオに人間の魂を与えてくれるよう祈る時にこおろぎが歌った。クリフエド
ワーズが歌いアカデミー主題歌賞を受賞しました。
6.Let's Go Fly a Kite (凧をあげよう)
−メリー・ポピンズより−(1964年)
メリー・ポピンズはハリウッドで最も優れたミュージカル映画といわれています。
優秀なスタッフと一流タレントをそろえました。
現代曲訳詞
イソタロのアンティとランナンヤルヴィ(フィンランド伝説民謡)
イソタロのアンティとランナンヤルヴィ
二人が話し合っていた。
おまえがカウハヴァの醜男 検察官をやっつけろ、
そうすれば俺があいつの別嬪後家を嫁にする。
まず二人は戸口をこわし、
それから寵を打ち砕いた。
仲間のなかで一番大きい
大男アンティが先頭だった。
イソタロのアンティが一番のりで、
ランナンヤルヴィが二番目で、
カウハヴァから来たプッキラのヤスカ
似たような野郎が三番目。
「こんちくちょう」ランナンヤルヴィは言った。
「この俺様が人を恐れるものか!
タール漬けの縄で口輪をかけて、
鉄棒で背中を打ちのめすのだ。」
「跳べ、跳べ、跳べ!」駿馬にまたがり
踊らせながら、ランナンヤルヴィは言ったのだ。
またもや極道息子は出ていった。
あの彼の貧しい家を後にして。
ランナンヤルヴィのことを歌うのはやめよう
ランナンヤルヴィは死んだのだ。
ランナンヤルヴィの墓場には
大理石の墓石が運ばれてきたのだ。
用意はいいか?(James Broughton)
「用意はいいか?」と北は言った。
大海原を越えていく用意は?
「用意はいいか?」と西は言った。
太陽と共に沈む用意は?
「用意はいいか?」と南は言った。
あてのない旅の用意は?
「用意はいいか?」と東は言った。
やり直す用意は?
大きなラルラ(Christian Morgenstern)
(詩の意味はなく、ただ擬声音の効果によるのみ)