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「器」

212 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 23:38

・・確かに・・その姿、形はエーコ・キャルオルに相違ない・・。しかし・・
しかし既に・・「それ」は、エーコではない事は、容易に感じ取る事ができた。
ガーネット「・・・お前か、やはりあの時・・ユーノラスで・・エーコを・・エーコを逃がしたのは。」
エーコ+??「・・・・・・・・・・・・。」
ガーネット「・・・そして・・お前は・・エーコの身体を奪い取った・・そういう事か。」
エーコ+??「・・私はお前も知っての通り、現し世に未だ実体を保つ事が出来ん、思念霊体に過ぎぬ。
故に、この世界に活動するにおいて、「私」に代わりし身体・・「私」をとり込めうるが
可能な「器」が必要であった・・。」
ガーネット「・・・それが・・それがエーコであったという事か・・」
エーコ+??「ククク・・その通り。我ながら己が悪運の強さに驚きだよ・・。
まさか・・まさか我が足元に・・このような「宝」が転がっていたのだから・・」
――――エーコの姿と成した「その者」は、笑いながら・・ゆっくりと語り始める・・―――

エーコ+??「・・当時、私は「力」の存在を未だ掴む事出来ずして、・・もっと、もっと
私がGトランス能力を与えし「駒」達に「活躍」をしてもらう必要があった。
その頃、ガーネット。お前は既にあの「力」の存在、気付いておったのであろうな・・
故に、お前は私の「駒」達を、全て殺してしまおうとしたのであろう・・。
「駒」達の「活躍」なくば、あの「力」の波動は弱まり・・その存在が私に知り得ぬ事となる・・
そんな折・・お前が先ず真っ先に殺そうとしたのが・・この「器」エーコとやらであったな。」
ガーネット「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

エーコ+??「おそらくお前は気付いていた・・この娘の潜在能力を・・果てしなく・・
どこまでもあるやわからぬ可能性を秘めた・・この娘の、底無しの魔力の成長を・・。
それを知るお前は、当然、この娘が「私」の手に渡ることを最も恐れていた・・・
故に、あの時・・ユーノラス大平原で完全に殺しておきたかったのだ・・。」
ガーネット「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

潜在する力

217 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/25(金) 00:16

エーコ+??「その頃、私はこの娘の事を全く知らずして、只、勝手な真似をし始めた
お前に、私の「駒」達の「活躍」の邪魔をされてはかなわんと思ってな・・
あの時・・このエーコが、貴様に消されてしまう寸前に逃がす事にした。
私の空間にな・・・。」
ガーネット「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
エーコ+??「・・お前が懸念していた通り、・・そして私にとっては好都合な事に、
この「駒」・・エーコは素晴らしい「器」であったよ・・。
私は当初、ガーネット。お前の力を最もかっていたのだが・・いや、私はこの娘・・この身体こそ
最初に手の内に入れるべきであった。さすれば、私の計画はとうの昔に完遂しておったのやも知れぬ。
ククク・・これはこれは予想外の事であった。
――――――――――――――
ある種、・・この身体は私が求めていたもう一つの「器」でもあった・・。
驚いたよ・・この娘の・・この小さな身体の体内(なか)に在りし・・
まさに底無しの魔力の収容能力(キャパシティー)。ガーネットよ・・
・・とうていお前には及びもつかぬ程のな・・・・。」
ガーネット「・・・・!!!!!!!!!!!!!」
エーコ+??「・・そしてこの身体・・この「器」こそ、我が思念霊体に在りし魔力のみならず・・
あの「力」・・そう、私とお前が望んでおるあの・・「太陽の力」!・・
その全てを完全にとり込みうるが可能な「器」でもあったのだ!!!」
ガーネット「・・・!!何ぃぃ・・・・・・・・・!!?」

エーコ+??「・・ガーネットよ。お前の力をかっていた私は、お前に新たな「自我」を与えた。
・・が、私はお前をとり込む事はしなかった。・・いや、できなかった。・・・わかるか?
ガーネット・・お前の身体・・その「器」の大きさでは、私の思念霊体の魔力・・そして、
「太陽の力」の全てをとり込む事が不可能であるからだ!
・・お前にはこの娘・・エーコ程の魔力の「容量」が・・・・無い!!」
ガーネット「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


エーコ+??「・・すなわち・・お前には・・あの「太陽の力」。
取り出す事は出来ようとも・・・・・・・・・・  ・・・・
・・・・・・・・己のものとする事は・・・出来ぬ!!!!」




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二つの「器」

219 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/25(金) 00:44

ガーネット「!!!!バカなッ!!!そんな・・バカなッッ!!」
エーコ+??「ククク・・ガーネットよ。人という「器」には、それぞれその内に
おける「容量」というものが在るのだ。・・いわばそれは、潜在能力。この大・・小によって、
その「器」の強さが計り知れる事となる。・・思念霊体とて、私ほどの魔力の持ち主ともなれば、
それを、そうそうすっぽりと、とり込めうる「器」等おらぬ。・・・
無理にとり込めば・・「破裂」する・・。定められた容量の「器」にその容量以上のものを注ぎ込む
事など出来はせぬ・・・・無論、ガーネット。お前も例外ではなかった。」
ガーネット「・・・・・・・!!」打ち震えているガーネット。

エーコ+??「故に・・私は2つの「器」を探す必要があった。・・1つは「力」を封印した「器」。
・・そして、・・もう1つはその「力」全てを受け入れる「器」。
・・その「力」の全てを受け入れる「器」は、いうまでもなく実体を持たぬ、
私に代わうる身体でもなくてはならぬ。・・・そして今、・・ようやく・・この身体!この「器」!!
エーコ・キャルオルの肉体を私は手に入れたのだ!!!
・・そして・・そして残りはもう1つ・・。封印の「器」、ベアトリクス!!
彼女の体内(なか)に在りし・・「太陽の力」!!
・・これでこの私の長きにわたる計画もついに完遂の時を迎える・・・・・」

          ヴオオォォォォンンッッッ!!!!!

刹那!エーコに向かって凄まじい爆炎の嵐がガーネットより発せられた!!!
しかし・・宙に浮き、楽々とそれをかわすエーコ。
そして何と!宙に浮いたままの状態で、眼下にあるガーネットを
まるで、嘲け笑うかの様に見下ろし、言い放つ・・。

エーコ+??「ククク・・何の真似だ?ガーネットよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名は…

227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/25(金) 01:33

ガーネット「・・!信じぬ・・認めぬ!!・・あの・・あの「力」は・・あの「力」はぁッ!
私のッ!!!私のォォォォ―――――ものだァァァァァァァ――――ッッ!!!」
グオオオオォォォンンッッ!!再びエーコに強化魔法を放つガーネット。
しかし、その爆風は、今度はエーコの身体の前で空しく霧散する・・!
エーコ+??「・・無駄だ・・お前はいくら足掻こうとも・・あの「力」を・・
「太陽の力」を手に入れる事はかなわぬ!!」
ガーネット「だぁぁ――まぁぁ――るぇぇぇぇぇぇッッ!!うわぁぁぁ――――ッッ!!!」
ヴオオオン!!!ヴオオオン!!!ヴオオオン!!!ヴオオオン!!!!
まるで狂ったかの様にガーネットはエーコに向けて、立て続けに魔法を放ち続ける!!
しかし・・その全てはかわされ・・あるいは消され・・1発たりとも彼女の
身体に触れることは無い!!
ガーネット「ハァ―――――ッ・・ハァ―――――ッ・・ハァ―――――ッッ・・!」
エーコ+??「・・思えば哀れよなガーネット・・。我が与えし己が自我は・・
最早、力の野望に完全に狂い果て・・既にその眼に何物も映る事・・かなわず・・。
・・自我を与えし者として・・その自我を消し去るのもまた、その者の義務であろう。」
ガーネット「・・・!!!私はッ!私は死なぬ!!・・あの「力」・・あの「力」で!!
・・私は・・「私」になるんだッッ!!・・殺す!!・貴様などに・・貴様などには渡さぬ!!」
シュウウウウウウウウウウゥゥゥ・・・ガーネットの身体全体がオーラに覆われ、そして、
胸元から、青白き光が発し始める!!・・・・究極魔法、アルテマの発動!!!
エーコ+??「・・!!お前・・自我を・・そして・・その力・・Gトランス能力を・・ククク・・
与えてやった・・この・・ハハハッ!!この私をッ!!殺すつもりなのかガーネットぉぉッ!!!」
エーコの双眼が眩いばかりの緑光を発す!!その小さき身体を凄まじい気勢のオーラが包みこみ、
・・そのオーラは急激に渦を巻き!そして・・それは何と!!!人の形と成した!!!
ガーネット「!!・・・それが・・貴様か・・!」エーコの背後についにその姿を現した思念霊体に
静かに問いかけるガーネット。
エーコ+思念霊体「・・・・覚悟は・・いいか?ガーネットよ・・。」
ガーネット「・・思えば私は貴様の名すら、未だ知り得ぬ・・名は・・名は何という・・?」
エーコ+思念霊体「・・ククク・・そういえば・・そうであったな・・私の・・
      私の名は―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――

深夜・・アレクサンドリア城の中心より凄まじい光が発し、辺りを瞬間、昼間の如く明に染めた。
直後、巨大な大轟音と共に、大地震がアレクサンドリア城のみならず、城下町全体を襲う。
アレクサンドリア城は、その発生源とされる玉座の大広間を中心に完全な半壊状態となった。
そして・・・・・・・この日より、アレクサンドリア城から・・・・・・
・・国王、ガーネット・ティル・アレクサンドロス17世の姿が、・・忽然と消えた・・・・





231 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/25(金) 02:08

212>217>219>227

簡略に言えばエーコの方が、ガーネットより魔力の絶対的収容能力が圧倒的に多いという事
例  エーコ=20GBのHDD   ガーネット=5GBのHDD

そんでもってエーコの身体にとりついている??の魔力の総容量=約10GB。
すなわち5GBの容量しかないガーネットには??はとり込む事は不可能。
そんで「太陽の力」の総容量をおよそ約8・5GBとして
これもまたガーネット(5GBのHDD)はとり込む事は不可能
でもエーコ(20GBのHDD)なら、??+太陽の力(18.5GB)
を全て収容可能。

以上 


 

 

 

 

 

 

 

 

凍れる島にて

235 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/25(金) 03:08

打ち寄せる波の音で、彼は目を覚ました。
朦朧とした意識が、水面に向かって浮上して行く感覚。
彼は一瞬、自分が海に浮いているかのような錯覚を覚えた。
「・・・」
「気分はどうだ?」
今自分が浮上して来た底の方から、彼を追うようにしてその声は伝わって来る。彼は何処に向けるでもなく、
呟きで以ってそれに応えた。
「うん・・・悪くないよ・・・でも・・・」
酷く肌寒い。
「ここは何処なの?」
「左を見てみろ」
彼が言われるままにそちらを見やると、遠くの方に、淡く朱に染められた山があった。
そして、そこに寄り添うようにして、何か巨大な建物らしきものが建っている。
黄昏に沈み行く周囲の情景は、最早独自の色を失い、ただ陽光の成すがまま、深く沈んで行く。
だが、その建物はそうした夕暮れの炎に焼かれながらも、影のように黒く、そびえていた。
「聖地エスト・ガザだ。覚えているだろう?」
「・・・うん。いつか来た事があるよ」
「お前の記憶は、そのまま残してある。・・・自分の名前を覚えているか?」
彼は、しばし視線を足元に移し、そして息を吐くように、その小さな声で呟いた。
「ビビ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

237 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/25(金) 04:35

「そう、ビビだ。よく言えたな」
「うん」
 答えると同時に、彼は立ち上がった。目線が少しだけ高くなり、少しだけ、目の前の海が広くなる。
「お前がビビである事は間違いない。
 だが、以前のお前と今のお前が全く同じ者であるかと言えば、そうでもない。
 かつて私や、私を構成する魂達が抱いた希望は、今やその方向性を反転させてしまったからだ。
 お前として形を成した我らの願いは、今、絶望へと転換され、顕在化した。
 今のお前と以前のお前は同じ構成分子を持ちながら、その存在意義は正反対のベクトルを向いているのだ。
 解かるか?」
「・・・」
「まあいい。それよりも、幾つかお前に伝えて置かなければならない事がある」
 声は、僅かにそのトーンを下げて、後を続けた。
「今、お前は私と繋がっている。足元を走る、小さな亀裂を見てみろ」
言われるままに目をやると、声の言葉通り、ごく小さな亀裂が細々と走っている。
最早迫り来る闇に消え入りそうなその亀裂は、けれども奇妙な光によって、ぼんやりと照らし出されていた。
「この光で繋がってるの?」
「そうだ。その光は私自身と、お前の背中とを繋いでいる。その光が途切れた時、
 私との対話は寸断され、今この時の記憶を失ったお前が、現世に生まれ出る。
 今のお前は・・・言ってみれば臍の尾で繋がれた胎児に過ぎない」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイン」

238 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/25(金) 05:13

「ここでの会話は、直接的に現世のお前に影響を及ぼす事はない。だが、
 潜在意識に、幾つかの指示を植え付けておく事は出来る。よく聞くんだ。
 まず第一に、世界の完全な破壊。これがお前の存在意義だ。お前自身、自らの内でざわめく感情に気づいているだろう?」
ビビは無言で頷く。そう、身体の内で駆け回る、冷たくも激しい感覚を、振り払う事が出来ない。
「特にかつてお前と共に戦った、ジタン、ガーネット、エーコ。この三人は何にも優先して滅ぼすのだ」
ジタン、と言う名に、感情が恐ろしい程の勢いで反応する。抑え様のない感情の逆流が、冷めた身体を瞬時に熱する。
「ジタンは・・・僕を・・・裏切ったの?」
沈鬱な声は、しかし、誰にも届かない。
「・・・お前はこの先、自らの生を生きる事となる。絶望に満ちた生、それをお前に与えるのは残酷な事でしかない。
 だが、それでも、私はお前を送り出さねばならないのだよ・・・」
声とビビを繋ぐ光の糸が、一瞬、頼りなげに揺れた。
「ただ一つ救いなのは、お前に力が有る事だ。それも、単なる魔導の力ではない、もっと強大な力。
 お前には、人間に絶望しその魔力を封じた、魔導士の始祖ハインの魂が含まれている」
「ハイン?」
「誰よりも深い絶望を抱き、死んでいった者だ。一切の希望を抱かず、それ故以前のお前を生み出す時には参加しなかったが・・・」
「・・・僕が絶望だから・・・」
「やがてその魔力が、お前の中で開花する。その力で、この世界を浄化してくれ・・・」
「あ、待って・・・」
光の糸が風に煽られ、途切れたと思った瞬間、視界が暗転した。

「そこに居るのは・・・子供か?」
黒い建造物の方から声がして、彼はそちらを振り返った。
「何してるんだ、ったく何処のガキだよお前」
宵闇に紛れ、影でしかないその男は、悪態をつきながら近づいてくる。
正確な容姿も、素性も覆い隠された夜の内で
「おい、名前は・・・」
「ハイン

彼はなんら躊躇することなく、答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

産声

242 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/25(金) 14:18

???  「アー−−!!」
ダリの地下工場…
ダリの悪夢と言われた日の…ほんの数日前に「それ」は生まれた。

人間の形をしているが…浅黒い肌と黄色の瞳…それは不気味な様相を呈していた。

その産声は激痛と…恐怖ゆえの雄たけびだった。
ゲホッとむせると、何か言葉にならない叫び声をあげてのたうちまわった。
一人の村人がそれを押えつけるが、信じられない力で押し返され、
アレクサンドリア兵が数人がかりで手足を押えつけねばならなかった。

ダリの技師「ガーネット女王無理です…!始めから理論的にも技術的に無理があったんですよ!」
ガーネット「…痛みを取り去れ。痛みを感じる機能など、人形には無用のものだ」
ダリの技師「しかし、こいつは剣を持たせるご予定とか…それなら…
      痛覚がなければ…後々困る事になります。」
ガーネット「さっさとしろ、このままでは狂い死ぬだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血の赤

247 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/25(金) 15:10

…そして、痛覚と恐怖心を取り除くために心の一部を壊した。
夕方…2度目の目覚めは静かな…静かな目覚めだった。
ガーネット「気分はどう…?」
???  「……」
ガーネット「…おはよう、セーラ」
セーラ  「それが…私の名前…」

一振りの女騎士用の剣と共に
赤く塗装した軽金属の鎧と真っ赤なマントが与えられた。
セーラ  「うわあ…素敵な色…!」
ガーネット「伝説の赤魔道士になぞらえたものよ。お前によく似合う。
      そして目覚めの日の激痛の赤…血の赤。
      おまえは人間ではないけれど、私の娘…
      アレクサンドリア国民としての血脈としての赤よ。」

兵1「……」
アレクサンドリア兵はガーネットの言葉に違和感を感じた。
女王が、優しい言葉をかけるなんて…しかし、すぐに小娘に忠誠を誓わせるための
甘言と気付き、納得した。同時に…あれを母と慕う事になるとは哀れな小娘だと思った。

「セーラ」は試験的に白魔道士と黒魔道士の魔力を融合させた赤魔道士
始めの激痛も白と黒の魔力の反作用のためだ。
荒削りの技術のため、ところどころにホコロビがでている。
指先など細部は崩れそうで…形を保つために魔力を編み込んだ手袋をつかわせねばならなかった。
それでも体内で白と黒の相反する力がせめぎあい、
セーラの研ぎ澄まされた魔力や鋭気を作り上げている。
ガーネット「そなたが、一番私に似ているかもしれない。」
不気味な笑みを浮かべながらそう言った。

ダリの技師「あの〜それではお約束のものを…」
ガーネット「報酬だ。不完全であるが、悪くはない。」
ダリの技師「うほっ…こんなにですか?」
ずしりと重い金貨のつまった袋を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の女騎士

254 名前:つー訳でアグアグの冒険開幕 投稿日:2000/08/25(金) 22:55

聖騎士アグリアス・・・全世界が混乱の渦に叩き込まれていたこの時期、
その名を忘れないでいたアレクサンドリア国民はわずかであっただろう。
英雄達がクジャとの戦いで勝利を収め、全世界に平和が戻り、
そして女王ガーネットが全人民の盛大なる祝福を受けて執り行われた
即位の式の当日、たった一人でアレクサンドリアに対する反乱を宣言した
謎の女性騎士である。
彼女は一切の経歴が不明ではあるが、戦術家としてのずば抜けた能力を買われ、
1ヶ月間、ベアトリクスの副官としてガーネットに仕えていた。
だが、その反乱は彼女の一時的な精神の錯乱として処理はされたものの、
当局は平和に向かいつつある世界への影響少なからずとして重大視し、
捕縛後、禁固200年の実刑を宣告されて政治犯収容塔へと幽閉されていた。
その後、彼女は牢獄の中においても預言的な言葉を周りに振りまき、
塔の守衛のほとんどを信者にしたりと、正負にとっては不吉な存在として存在し続けていた。
そして数年後、世界は再び混乱の渦中へ。

・・・その日は特に暑い日であった。
聖騎士アグリアスは静かに息を引き取った。享年28歳。
生涯貞操を守り通したという。
〜終わり〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静寂の森で

255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/25(金) 23:04

全てが寝静まってしまったような、静寂が支配する夜。
リンドブルムから逃れたマーカスは、森の中を走っていた。
木々の隙間から漏れる月明かりのお陰で、意外にも森の中は明るい。
暫く走りつづけていると、マーカスの眼前が開けて大きな木が姿を現した。
マーカス「ハァ…ハァ…。少し疲れたっス。ここで少し休むっス」
マーカスはその木の根元に腰掛けると、水筒を取り出して水を一口、口に含む。
マーカス「おいらは何とか逃げ出せたけど、ボスは無事か心配っス。
     今回は相手が相手だけに…」
そう呟いたマーカスは、己の呟きを否定する様に首を振る。
マーカス「あのボスがそう簡単に死ぬわけないっスね。
     お前がオレの心配するなんて1000年早いって怒られてしまうっス」
マーカスはもう一度水を口に含んで、空を見上げる。
空には不気味に輝く蒼い月。
不意にその月が暗雲に隠されて、木々を揺らしていた風が止んだ。
マーカスが不審に思って立ちあがると、不意にマーカスの眼前に冷たい光が閃いた。
そして、水筒を持ったマーカスの右手に衝撃を感じ、手首から先が地面に転がる。
マーカス「え…、あ…、うわぁーっ!」
先のない手首と地面に落ちた手を見比べて、自分の身に起きたことを悟ったマーカスは、
痛みと恐怖の為に叫び声を上げる。
????「久しぶりだな。マーカスさん」
先ほど光の閃いた方から、マーカスにとって聞き覚えのある声が聞こえ、一人の男が姿を現す。
マーカス「シナ…」
シナ。かつてはタンタラスのメンバーだった男。
そして、今は偽りの英雄ゾディアックブレイブの一員。
シナ「そうだ。エーコ大公の命でお前を始末する為にやって来た」
そう言ってシナは、冷ややかな視線をマーカスに送る。
その視線を身に受けた瞬間、マーカスは背筋に寒いものを感じ、脳が警鐘を鳴らす。
マーカス「ま…待ってくれっス。おいらはエーコ様を裏切るつもりなんかないっス。
     あれはバクーとブランクの奴が勝手にやったことっス。シナ…、おいらたちは友人っス。
     命を助けて欲しいっス」
マーカスは、今までボスや兄貴と呼んでいた二人に全責任を擦りつけて、涙ながらに哀願する。
この場を上手く切りぬける為に。
シナ「何が友人だ…。シナの芝居は下手糞だって言ったのはどこのどいつだ?
   タンタラスでシナが一番役立たずだって言ったのは誰だ?」
マーカス「し…知らないっス。きっとブランクの野郎がそんなことを言ったに違いないっス」
シナ「よく言うぜ。お前がブランクの奴に言ってたんだろうが。
   オレがドアの裏で聞いていることも知らずになぁ」
これは事実そうなのだった。
マーカスは、シナの前でこそ友人の様に振舞っていたが、本心ではシナを見下していたのである。
ブランクが言ったというのは勿論でまかせだ。
マーカス「ひぁ…」
自分は殺される。
まもなく訪れるであろう死の恐怖の為にマーカスの股間から、生暖かい液体が流れ出して水溜りを作り、
出来あがった水溜りからはアンモニア臭を伴った湯気が上がる。
シナ「クックック…。死にたくないか? だったら、地面に額をこすり付け、シナ様の下僕にしてくださいと言えば、
   エーコ様に頼んで見逃してもらってやるよ」
シナから出された思いがけない提案。
保身の為に仲間に責任を擦りつけたマーカス。
自分が生き延びる為なら悪魔にでも魂を売るこのクズ野郎は、プライドなど易々と捨てて、
シナの足下に跪き地面に額を擦りつける。
マーカス「シナ様の下僕に…」
シナは、マーカスが言葉を言い終わらないうちに脳天目掛けてルーンアクスを振り下ろした。
振り下ろされたルーンアクスはマーカスの頭を叩き割り、飛び散った血飛沫と脳漿がシナの靴を汚す。
頭を割られたマーカスは、少し痙攣していたがすぐに動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナマクラ

257 名前:マーカス死んだのね・・・ 投稿日:2000/08/25(金) 23:40

張りつめた緊張感の中、対峙するバクーとルビィ。
ルビィは壁に突き刺さった錆びたアイアンソードを投げ、バクーの目の前の床に突き刺さった。
ルビィ「そろそろ覚悟しなさい。その武器じゃ私の斬鉄剣に対して余りに見劣るというもの。
    アジトの中にもっと良い武器があるのでしょう?取り出す時間をあげるわ」
自信たっぷりなルビィの言葉を聞いてもバクーは動じず、床のアイアンソードを引き抜いた。
バクー「ガハハハハハ!
    お前のような尻の青いガキにそんな余裕をやった覚えはねえな。
    このナマクラで十分だ。
    大体、お前イメチェンかなにかしらねえが、そのしゃべり方は何だ?
    慣れない言葉を使うから棒読みになってるぜ。
    芝居ってものを一から教えてやるからかかってこい、ダイコン!」
表情を引きつらせるルビィ。
ルビィ「・・・・愚か者め。この期に及んでくだらないプライドを。
    私を侮辱したことを後悔させてあげるわ!」
バクー「グハハハハハハ!全然感情がこもってねえぞ!
    お前ウケを狙ってるのか?さすがはトラビア出身だな。
    いい加減、素人芝居はいいから来てみろって、ダイコン!!」
ルビィ「ダイコンっていうなあああああ!!!」
激情に身を任せ、斬鉄剣を構えてバクーに突進するルビィ。
短気な彼女はいきなり必殺技を放ったのである。
大きな衝撃音を残し、すれ違う二人。
斬鉄剣は、アイアンソードごとバクーの体を一刀両断し、
大量の血とともに無惨に床に転がるバクーの頭部・・・を彼女は想像した。
だが・・・・。
バクー「ガハハハハハハ!なんだいまのは!?蚊でも刺したのか?」
ルビィの「斬鉄剣」を身に受けても微動だにせず、傷一つ負わずに高笑いするバクー。
しかも「ナマクラ」のアイアンソードすら斬れてはいない。
ルビィ「な・・・なんですってえ???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷い子

267 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/26(土) 01:43

―――――――――・・・・ ・・・・逃げたか・・・・・・・・・・・・

――――――――・・・・   ・・・まあ・・・よかろう・・・・・・

―――――――・・・・・最早・・・長くは・・・生きられまい・・・

――――――・・・・  ・・・・・・・・・・・・・・さて・・・

―――――・・・残る最後の「器」を手に入れに・・・・・・・・

――――・・・・場所は・・・・もう・・わかっている・・・・

―――・・・・・・今度は・・・逃がさぬよ・・・・・・・・

――・・・かわいい・・かわいい・・・・・私の・・・・・

―・・・・・我が・・同郷の・・・哀れなる・・・・・・

・・・・哀れなる・・・・迷い子・・・・・・・・・・

ククククククククククククククククククククククククククククククククククク
ククククククククククククククククククククククククククク・・・・・・・・

            ギュウゥゥゥ・・・・ンン・・
・・・・再び虚空に穴・・・・その中へ・・・・・消えてゆく・・気配・・・
            シュウウウウゥゥゥ・・・・・
・・・・・・閉じ往く空間・・・そして・・・・・・・・・そして後には・・

―――――――――――――    無    ―――――――――――――― 

 

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