よくある質問:コミュニケーション編
日本人保護者の集いの際に出た子供のコミュニケーションに関する質問を中心に集めてみました。質問に対する答えはスクールサイコロジスト、ESLの先生などの意見をまとめたものです。引き続き、参考となりそうな質問を追加していく予定です。
友達づくり
家庭と学校の連絡
- 子供のアメリカ人の友達づくりを進めるにはどうしたらよいでしょうか?
子供が小学生の場合は、まず親同志で連絡を取り、日程を確認してから、家で一緒に遊ばせるというのが典型的なようです。初めてのお宅に英語で電話をするには勇気がいりますし、せっかく勇気を出して電話をしたのに、相手方の親が不在だったり、断られたりすると士気をくじかれてしまうものですが、そういう場合は、運が悪かっただけだと割り切って考えるようにしましょう。相手の親が不在だった場合は、相手の都合のよい時に電話をしてもらえるように、クラスメートの○○の親であることと自分の電話番号を言い残しましょう。(もし自分が外出してしまう場合は、自分の都合のよい時間も添えましょう。)日本では、自分の用事なのだから相手に電話を掛けさせるのは相手に手数をかけさせることだと考え、メッセージを残さずに相手が電話に出るまで掛け直し続ける場合が多いと思いますが、アメリカでは、相手のことを考えればこそ、まず相手の都合(スケジュール)を尊重するという考えになりますので、電話を掛けるという行為が面倒であるとはとられません。相手の親に断られた場合は、大抵、スケジュールが合わないというだけの理由だと思うので、いつだったら時間があるのか逆に聞いてみるとよいと思います。学校やコミュニティのスポーツ・音楽クラブなどに参加するのもよいアイディアだと思います。スポーツも音楽も、高度な英語力が必要とされず、ルールさえ理解していれば他の子供達と一緒に楽しく活動し経験を共にすることができます。友達づくりを優先させるのであれば、個人レッスンではなく、集団で行う活動に参加させる方が、子供にとっても社会的な自分の居場所を確保でき、新しい環境にいることから来る不安感や孤独感が和らぐでしょう。
- 右も左もわからない新入生(=転入生)であるのに、クラスメートがあまり親切ではないようなのですが・・・?
小学生のうちは、子供達は新入生に興味深々であれこれ面倒を見てあげることを楽しみ、反対に先生に世話をし過ぎだと注意されるほどです。しかし、文化的な違いもあり、学年が進むに連れて、独立心を育てようとする方向に変わり、頼まれていないことを必要以上にすると相手が何もできないと馬鹿にしているとネガティブにとられかねない情況になるのです。ですから、自分がどんなことに助けが必要であるのかを言わないと動いてくれない、日本人からすると‘気の利かない’人達が年齢とともに増えてくるわけです。そして、ずっと日本の文化環境で育ってきた子供達は、他人に迷惑を掛けるのは悪いことだと思い、助けが必要である場合も声に出さずに黙って我慢してしまうことが多いため、気が付いたら周りに誰もいないという状況になってしまうことがよくあるのです。そのような子供に対し、仲良しができるまでクラスでバディシステムをつくって、ランチを一緒に食べたり、休み時間に一緒に遊んでくれる係を付けてくれる先生もいますが、高学年になると「助けを自分から求めずに誰かが進んで助けてくれるのをいつも待っていて幼稚だ。」と手を差し伸べようとしない先生もいます。子供がそのような状況に置かれているようであったら、自分から助けを求めたり質問したりできることが、独立心がありとても頼もしいことだと教え育てていく必要があります。反対に、日本で新入生がいろいろ助けてもらっていたように、新入生である自分が助けてもらうことは当然だと思っている場合、それがいくら無意識であっても、周りに‘要らぬおせっかいっだった’とか‘横柄な子供だ’と勘違いされ、親切なクラスメートが段々離れていってしまうこともあります。アメリカに比べて効率のよいサービス習慣の行き届いている日本から、突然アメリカにやってくると、どこまでが当然やってもらえると期待できることなのか、その境界線を見極めるのが難しい上、感謝を表現すべきタイミングも見過ごしがちになってしまいます。これは子供の世界でも同じです。新入生に対するクラスメートの自発的な助けは、どちらかと言うと日本では習慣に近いかもしれませんが、アメリカではさきに触れましたように独立心を育てる文化であるため、年齢によっては当然とは言い切れません。ですから、助けてもらったことに対して、本当に助かっていることを常に知らせ、感謝の気持ちを伝えることが大切です。毎日クラスメートにどんなことをしてもらって助かったのか、それに対して笑顔で“Thank you.”と言えたかどうか確かめてみましょう。子供が「クラスメートが勝手にやってくれたから何も言わなかった。」と言う場合は、もしクラスメートの助けがなかったら自分はどうしていたのか、本当に自分だけでやり遂げることができたのか、想像させ考えさせてみるのも、感謝の気持ちを育て、“Thank you.”と自然に言えるようになる訓練になるかもしれません。
日米の文化の違いのために、このように同じ行為が逆の意味に解釈されてしまうことがあり、日本育ちの親にとってもアメリカの価値観を子供に教えていかなければならないということは大変なことです。日本で「他人に迷惑をかけてはいけない。」と教えていたがために、「恥ずかしがらずに、どんどん助けを求めたり質問するようにしなさい。」と言うことが、子供に「どんどん他人に迷惑をかけなさい。」という意味に取られ、親の言っていることが矛盾していると思われかねないからです。実際、子供のサバイバルスキルのためにそう口では言っていても、自分自身が日本でのやり方から抜け出せず実行していないため、言動の矛盾が子供に伝わってしまうこともあります。どちらの場合にせよ、新しい環境で今までとは違う社会的スキルが必要であることを子供にわからせるには親が子供の見本になることが一番説得力があると思います。一緒にスーパーに行く時などに、子供とかわりばんこに店員をつかまえて「○○はどこにありますか?」と恥ずかしがらずに質問をし‘誰かに迷惑をかける’練習をしたり、質問に答えてくれた店員さん、レシートやお釣をくれたレジのお姉さん、買ったものを袋につめてくれたおじさんに《あなたのお陰で救われました!》と言わんばかりの笑顔で“Thank you!”と言う練習をしたりしてみましょう。
05/03
- 先生に問い合わせの手紙を書いても、返事が戻ってこないのですが・・・?
長い答えを必要とする質問でしたら、後回しにされて、忘れられてしまうこともあります。先生に質問する手紙を書く時には、先生が答えるのに手間がかからないように具体的な内容にするように努め、質問の下に選択肢を書いておくとよいと思います。子供がそれを渡してその場で読んでチェックマークを付けて返してくれるはずです。(例えば、「○○について全くわからないので教えて下さい。」という質問を避け、「○○については◇◇ということであっていますか?・・・Yes/No」「○○の意味は次のうちどれでしょうか?・・・◇◇/××/△△/その他〔 〕」「○○については誰に問い合わせをすべきでしょうか?・・・先生/ESL/校長/学区/その他〔 〕」というスタイルにしましょう。)人間味のないやりとりにはなってしまいますが、返事を書くのに必要な時間をクラスの子供達に回さなければならない先生の立場を理解し、このような形でサポートしましょう。- 翌年のクラス編成にあたり、子供が仲のよい友達と同じクラスにしてもらえるように夏休み前にリクエストをしたのに、全く友達と別のクラスにされてしまいました。
学校の雇用制度は年区切りなので、学校によっては30人ものスタッフが前年度から同時に変わる場合も実際あるようで、学年・学校の変わり目の時期に学校内のスタッフ同士の連絡自体が途切れていることもよくあるようです。個人的なリクエストであってもカンファレンスなどで既に話し合われた場合でも、翌年の担当者(校長先生やコーディネーター)と直接話していない場合は、実際にリクエストが担当者の耳に入っているか確認をするようにしましょう。夏休み前に担当者との確認ができなかった場合は、新しいスタッフの決定、学校関係者の休暇などを考慮すると、8月に入ってからの方がスタッフとの連絡の取り合いも確実ではやいようです。クラス編成が発表されてからでも、たとえば、特定の友達の存在が学校生活の支障を取り除いたり、問題行動を最小限にとどめることができるような場合、クラス変更をしてくれると思いますので、あきらめずに担当者に子供の学校適応状況とクラス変更の必要性を説明してみましょう。
- 中学校で、担当教師からではなく、専門家のスタッフから電話が来たのですが、学校で何か起こった場合は専門家から電話が来るものなのでしょうか。逆に家庭で何か起こった場合も、担当教師ではなく専門家に連絡や相談をすべきなのでしょうか?
幼稚園・小学校時代は、学級担任の先生は子供と触れ合う時間が長く、日本と同様、子供にとって学校社会内での保護者的な雰囲気がありますが、次第に先生も含めてスタッフの役割分担が非常にはっきりしてきますので、ひとりの先生が子供の全てを把握し、全ての問題を受け持つということはなくなります。中学校以上でしたら、先生はあくまでも教科学習面での専門家という見方であり、ホームルームの先生も学校と家庭の事務的な連絡係といった方が近い感じです。ですから、内容によっては、親が各専門家と直接連絡をとることも増えてくると思いますし、子供自身も、次第に、学習面では先生、悩みごとはソーシャルワーカーやサイコロジスト、進路相談はスクールカウンセラーという形になってきます。先生があらかじめ「後から○○について専門家から電話が行きます。」と知らせてくれるとよいのですが、そこまで気のきいた先生は少ないかもしれません。専門家から電話が来た場合は、複数のクラスで、“学習面以外の”要注意な症状(問題)が数週間に渡って出ているような場合、もしくは、症状が特別きわだつ場合が多いと思います。専門家は先生よりも学校内で身動きがとりやすい立場にあり、内容によっては、他の教科の先生を始め、以前受け持ちだった先生や前の学校での様子、家庭での様子を把握して子供の全体像をつかむ中心的な役割を担っています。社会面、精神面、健康面などの問題である場合は、どんな情報が問題解決に必要なのかを把握しているのは、訓練を受けた各専門家ですから、先生を通さずに専門家と話をした方が手間を省く意味でもよいと思いますし、より効果的なアドバイスや詳細な情報がもらえると思います。(先生には専門家から話が行くと思います。) ただ、サイコロジスト、ソーシャルワーカー、カウンセラーの役割が学校によって多少異なると思いますので、初めは連絡のとりやすい先生に連絡して、もし専門家を紹介されたり、専門家から電話が来るようになったら、それ以降の似たような問題はその専門家と話すようにすればよいと思います。
日本と学校のシステムが異なるので、専門家のスタッフから連絡が来たら、初めは驚かれるかもしれませんが、先生はあくまでも教科学習面での専門家という見方をするようになれば、「内申書に響くのではないか?」というような先生の顔色を伺う心配のいらない便利なシステムでもあります。
- 子供から授業の様子を聞いていると、先生の教え方や子供に対する態度、言葉遣いに不満があります。どのように苦情を伝えたらよいでしょうか。
先生に対する苦情は先生よりもポジションの高い校長先生や例えば特別支援教育プログラムであれば特別支援教育のディレクターなどがよいでしょう。そして、手紙には、子供がどのように言っているのか、何が起こったのか、なるべく具体的に、もし日にちや問題発言の回数などが分かれば、そのような情報も含めて書き、“親として気になることであるので、事態の早急な改善がなされるよう対処して下さい”(例:“I would appreciate if you could handle this issue in the best way.”)というような形でまとめましょう。そして、出来れば、同じクラスを取っている他の生徒の親とも連絡を取り、連名で手紙を出すのが効果的です。(多ければ多いほどよいです。)しばらくしても状況が改善されないようでしたら、今度は手紙を出したスタッフ(校長先生やディレクター)の上にいる学区の教育長(superintendent)宛てに苦情を伝えましょう。子供達の学習状況が学校のスタッフからの報告で初めて知ることがあるのと同様、教師の質についても親からの報告があるまで学校側が把握していないことがありますので、子供のためにも学校のためにも、苦情がある場合は、子供に長い間我慢させることなく学校に伝えるのがよいと思います。