● 夜桜06 ●
―――――悲しそうに
―――――泣きそうに
―――――壊れそうに
そんな風になってまで伝えたかった言葉。
その重さは測りきれない。
思えばそのセリフに惚れたのかもしれない。
「あの殺し文句なら覚えているぜ?積極的だね〜クラピカちゃん?」
本当はふざける場所ではない事は解っている、でも無理だ。
―――――――俺はそんな顔を見たくない。
「なっ!!誰がそんなことを…!」
「だって俺を「殺す」んでしょ?それって自分以外の事を考えるなって事だからつまり死だな。俺、クラピカの為なら死んでもいいぜ?」
「貴様!!馬鹿な事を言うな!!死んだら終わりなんだぞ!!」
そう言った顔は今まで見たことの無い表情だった。悲しげな顔とは正反対の怒った顔。
レオリオは動き出した。その一瞬を見逃したクラピカはあっという間の事で思考回路が追いつかず、気が付いたらレオリオの腕の中にいた。
「ごめん、大事な事だってことはわかっている。許してくれ。」
「命を粗末にしないならな。で、さっきの内容は間違っているぞ、訂正しろ。」
そう言われるなり、思わずレオリオは微笑んでしまった。
「笑うなっ!!」
真っ赤になって言ってもそれは逆効果で
「はいはい、すみませんでした。クラピカ様。」
「反省していない!それより離せ!!」
「何で?ちゃんと生きている証拠を示そうとしたのに?」
ほらといってレオリオはクラピカの右手を掴んでその手を自分の心臓に当てた。
「ほら、聞こえるだろ?生きている証拠。」
「!!解ったからとにかく離せ!!」
これ以上やったら逆に怒るかもしれないと思ったレオリオは残念そうに手を離し、抱いていた手を離した。
「今度こんな事やったら、本気で怒るからな。」
「わかった。で、こんな夜中に一体、何していたんだ?」
「ちょっと調べ物をな……」
「夜中に?」
「悪いか?」
悪いかって…そりゃ悪くは無いが…と思ったのだが、レオリオはその言葉を発しなかった。普通、こっそりでも図書室に調べ物があって来たのなら懐中電灯のひとつでも持ってくるはずなのにクラピカは持って来ていないのだ。だから今回は聞かない事にした。
「別にいいけどな。でもこういうところで本を読んでいたら一時間もしないうちに視力低下の前兆が訪れ始めるんだ。目が悪くなっても知らないぞ。」
「お前は医者か?」
「卵だけどね。医学生なんだ。」
「へぇ…じゃあ…」
そう言ってクラピカは何処から持ってきたのか解らないが今まで読んでいた本をレオリオに見せるかのように向きを逆さにしてきた。
「『動物医学』…?」
「そうだ。」
「お前、獣医になりたいのか?」
「考えていない。聞きたいのはそういう事ではなくて…鳥のことなんだが……」
クラピカの話はこうだ。『自分が飼っている鳥が最近調子がおかしいのだ』と言う事だった。その鳥はある日、自分の部屋に迷い込んでいた処を助けたのだと言う。で、弱っていたので回復するまで治療をしてあげていたら懐いてしまったので飼う事にしたらしい…でもここ1週間前からその鳥の調子がおかしく、物を食べないし食べてもちょっとだけで目は充血している、動きも鈍いと言う事だった。
「ふ〜ん…で、名前は…?」
「『セン』」
「センちゃんかぁ…よし今度連れて来い。俺が見てやる。」
見てみないと状態がわからないしな?ただし人間の医学と獣医学は違うけどいいか?と、付け足して。
「あぁ構わない。ありがとう、レオリオ。」
「いいって。気にするな。」
すると顔が綻んで笑顔になった。その顔は今日レオリオに見せた顔の中で一番いいのものだった。
「やっぱりそっちの方がいいな。」
「何がだ?」
「別に。」
きっとお前は怒るから教えない。
そんなやり取りの後もクラピカは動物医学にというか医学に興味を持ったのか色々と聞いてきた。医学だけではなく他の事についても話し合った。独学で勉強していると言っていたのだが、その内容はとても濃くとてもじゃないがひとりで勉強して手に入れた知識とは思えないものばかりだった。そんな話にレオリオは興味を持って、クラピカと互いに話を聞いて、意見を言ったり、解らないところは教えあったりして話し込んでいた。いつの間にか今日始めてまともな会話をしたもの同士とは思えないほどに…
「さて、そろそろ帰るか。」
話もそこそこにレオリオがお開きを意味する言葉を言った。
「もうそんな時間か……」
「送るから仕度して。」
「結構だ。」
「何言っているんだ?遠慮するなって。」
「…いい……1人で帰れる。じゃ、また。」
そう言うなりクラピカは走り去って行ってしまった。
――――――触れられそうで、触れられない
そんなもどかしさが心に残った。
「医者の卵」としての自分ではなく、「レオリオ」という自分が言っている。
あの子を…
癒せるのは、自分でありたい。
救えるのは、自分でありたい。
自由に出来るのは、自分でありたい。
その笑顔をずって見せて欲しい…………
こんなにも心が寒いのは久しぶりだ、おかげで今日もゆっくり眠れそうにない。
月がこんなにも明るいだとは思わなかった。
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