● 夜桜05 ●
気が付けばもうお昼の時間は終わっていた。しかし朝から図書室にいて動いていないせいか、さほどお腹は空いていないのでレオリオは晩ご飯までこのままここにいる事にした。
さっきは夢中で本を読んでいたので気が付かなかったのだがこの部屋からは、あるものが見えていた。
丘の上にそびえ立つ一本の桜の木。
最初にここに来た日に会った、ステンドグラスの神のような姿の人間―――――――
礼拝堂で会った時は話もしなかったがその後、桜の木のところで会った時は凄く驚いた。
近くで見るとますます綺麗だった。無機質感じもした。そんな人間が言う言葉には疑問点がいっぱいあるのだ。桜のところで分かれたときはちょっと引っかかった程度だったし、教会にいる子供だろうと思っていたから後で話をしようと思っていたのだが、一度も会わないのだ。それに子供達に聞いても「知らない」としか言わないし……謎だらけである。
「う〜…わからねぇ……」
「何が?」
―――――――――――!?
思わず声が聞こえて体を強張らせた。
「キルア、ゴン!?……ったく、いきなり声がするからびっくりしたじゃねーか…あいつかと思った……」
「はぁ?せっかく人が昼飯持ってきてやったのに。」
「レオリオはお昼になっても食堂に来ないから団長に聞いたら「図書室にいますよ」って教えてくれたからお腹空いていると思って持って来たんだよ。」
「そっか…悪ぃな。ありがとう。」
ふだん子悪魔的な行動な二人でもこういう優しさもあるんだぁと改めて実感した。
レオリオはこの2人が、本当は人に対して思いやりがある子だということはわかっていたのだ。確かに自分と遊んでいる時はいたずらをしようとするがきちんと話は聞いているし、いたずらも自分達で責任が取れる範囲でしかやらないのだ。そして真面目な話では、言っている事はきちんと筋が通っており正論なのだ。普段の行動はまるで年相応に見せるようにしているだけなのかもしれない……
「いいって。」
これで俺らも午後からの授業サボれるし?とキルアが答えた。
聞いていて解ったのだが今日朝食後からこの2人の姿が見えなかった理由は授業があったからなのだ。いつもはサボっているらしいのだが、今日はクロロに捕まって教室に強制連行されていたらしい。
「だって簡単すぎて面白くねぇんだもん。なぁ、ゴン?」
「俺は難しすぎて面白くない…でも知識として頭に物を入れるのは好きだよ。」
「そういやお前等の成績見せてもらったけど、ゴンの成績はちょっとやばいよな…特に数学。」
二人が持ってきてくれた昼食のサンドウィッチを食べながらレオリオは答えた。
「うっ……!だって理解し難いんだもん……」
「まぁ数学は理解しないと無理だな。じゃあここにいる間には俺が数学教えてやるよ。」
「ホント!?レオリオ!!」
「あぁ。」
「ありがとう!!」
「よかったな、ゴン。これで『おやつ配分戦』で負けねぇな。」
「うんそうだね!!」
椅子に座っていたにも関わらずゴンは飛び上がって喜んだ。その姿にレオリオもキルアも何時の間にか笑っていた。
遅い昼食を食べ終わった後3人は夕食までの時間は図書室にいる事にした。
「なぁ、レオリオ。ひとつ聞きたい事だあるんだけど…ちょっと引っかかっている事なんだけど…」
レオリオの仕事を手伝っている最中、後ろにいたキルアがそう問い掛けてきた。
「俺も、二人に聞きたい事だあるんだが…」
「じゃあレオリオからどうぞ。」
「いや、キルアからでいいぜ?そっちから話し掛けたことだし。」
「いいの?じゃあ早速。さっき俺らが来た時言った「あいつ」って誰?もしかして、教会にいる奴に「ステンドグラス見たいな姿の人間知らないか?」って聞きまくっている奴のこと?」
やっぱりキルアは頭の回転が速い。というか鋭いのかもしれない。
「そうだ。で、俺からもいいか?実は同じ話なのだがそいつは誰だか知っているのか?」
「簡潔に言えば「YES」。ほぼ間違ってないと思うよ。」
「じゃあ何て名前なんだ?」
「質問と答えは交互に答えない?何処で会った?」
「一回目は礼拝堂。二回目は丘の桜の処。で、名前は?」
「『クラピカ』だよ。でも俺達から聞いたって言うなよ?」
「あぁ。」
「じゃあ次は俺から質問してもいい?」
今まで聞き役に徹していたゴンが聴いてきた。もちろんいいよと答えた。
「クラピカ、元気だった…??」
「見た限りはなんとも…でも手は冷たかったぜ?」
握ったら真っ赤になって怒り出したけどなとレオリオは笑顔でそう答えた。まるでその時のことを思い出しているかのようにして。
「ならよかった。」
「じゃあ最後に俺からも質問、お前等とクラピカの関係は?」
「「友達!!」」
2人は迷わずそう答えた。
今日はゆっくり時間が流れたような気がした。それはあの2人が騒がなかったからかもしれない。
あの後も話をしていたのだが二人とも「調べものがある」と言って奥の倉庫に入ってしまったので、レオリオは本を片付けた後、再び本を読み始めたのだ。
久しぶりにゆっくり寝ようと思っていたのだが中々眠れず、咽喉が渇いたレオリオは水を飲みに食堂に向かっていた。
その帰りの事だ。
今日という日の大半を過ごした図書室が開いていたのだ。鍵は自分達が閉めた筈なのに…
不思議に思ったレオリオはゆっくりそのドアを開けた。そして中に入って誰かいるか確認しようと歩いていると月明かりに照らされたある1人の人物に出会った。
今日、ここで話題に上がっていた、その人物…………
「どうした、クラピカ?」
聞いた事はあるが名前は教えていないはずの人物の声。クラピカはその人物の声を聞いてとても驚いた。
「名前……何故…??」
「あぁ、やっぱりまずかったか…ごめん……」
「いや、言わなかった私も悪いのだ。さしずめゴンとキルアから聞いたのか?」
「ご名答。よくわかったな。」
「私がここにいる事を知っているのは2人しかいないからな。」
その顔は悲しげで、思わずレオリオはクラピカのそばへとまた一歩足を踏み出した。
そうして、手をのばすと届く範囲まできたところで、停止を呼びかける声がかかった。
「何故……?」
レオリオは掴みかけた自分の手を見て、それからクラピカに向き合った。
「前に言ったではないか。」
そう、今でもちゃんと覚えている。
あの夕方の桜の木の下で、別れ際で言ったクラピカのセリフ……
悲しげに、壊れそうになって………
『……レオリオ………
お前を………私は………………………
―――――――――――――――――――――――――――殺すかもしれない…………』
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