● 夜桜03 ●
――――――――――― いつの間にか日が落ちかけていた。
着くなり早々に始まった戦争は怪獣2人(2匹?)の勝利で幕を閉じた。
敗因はいっぱいある。
まず、相手を甘く見すぎていたこと。自分より小さい子供ならその身長さは見てわかるように違い、その分足のリーチも明らかに違うのですぐに追いついて捕まえてやろうとしたのだが……速すぎる……走っても走っても追いつかないのだ。何時の間にか本気で走っていたのにも関わらず……12歳の子供とは思えない走りだった。しかもそのお子様達は息切れひとつしていない。
そしてもうひとつは自分の身長…というか体系。こんな大柄なしかも体格のいい男が走って何かにぶつからないはずが無いのだ。物なら壊さないように走ればいいのだが、人間となると話は違う。前から人間が来たら避けようとするのが当たり前。自分は当然避けるがそれと同時に相手も避ける。これが同じ方向に避けたら………もちろんぶつからないはずが無いのだ。この場合どこからどう見ても走って来たレオリオが悪いのだから謝る事は当然である。そんな事をしているうちにすっかり2人を見失ってしまっていたのだ。つまり負け。
「あ―――――畜生…見失っちまった……で、ここは……」
来たばかりで右も左もわからないレオリオが自分の現在地を理解できる事はない。もちろん帰る道も。つまり迷子だ。
わかることはひとつ、ここが外で桜らしき木の下にいることだ。
夏と言うことでその木は葉っぱの緑で覆われている、が、今は夕日の光を浴びて薄紫色になっている。
それは幻想的で、夜に月に照らされる時と同様に綺麗だった。都会ではこんな風に自然を感じる事はあまり出来ないのでその姿をもう少し見てみることにした。
「誰だ!?」
突然どこからかわからないが、声が聞こえた。
「―――――――…???」
「馬鹿、違う上だ。」
馬鹿といわれてカチンときたレオリオだったが、疲れているせいか怒る気にもなれず、仕方なく相手の言葉に従う事にした。
するとそこには…………………教会に来た時に最初に出会った人間が木の上でその枝に座っていた。
「……あれ、あんた…………」
「さっきはどうも。」
「人間か……??」
「足は一応あるが?」
何かご不満でも?といかにも言いたそうな顔でそいつは答えてきた。最後の夕日に照らされて見えるその顔はさっきと同じように綺麗で寂しそうだった。
「俺、レオリオって言うんだ。今日から一ヶ月ほどここでボランティアするからよろしくな。」
「そうか。じゃ、大丈夫だな。」
「??……そういやお前、名前は……」
「……………」
名前を聞こうと思ったら急に黙られた。
「……あぁ、言いたくなかったら別にいいって。ごめんな。」
大学で医学を学んでいるレオリオにとったら、これがどういうことかわかっている。言いたくないのには訳がある。心理学的にもこういう場合、無理に聞いたりする事はタブーだ。相手の気持ちを考慮して自分から言い出すこと待つのが大切なのだ。でないと相手は自分(レオリオ)というものを信頼しないのだ。
「すまない……」
「いいって…それより寒くないか?そんな薄着で……」
木の上から飛び降りるのを手伝ったレオリオは改めてその人物をきちんと見た。さっき、初めて会った時の服とは違い、いかにも普段着というものだった。
「そうか?気にせず出てきたからよくわからないが………」
「絶対薄いって…ほら、手が冷たいじゃねーか。」
そういうなりレオリオ両手で相手の手を握った……すると相手は一瞬でその手を離した。顔を真っ赤にして……
「おぉ、照れちゃって、もしかして惚れた?」
「馬鹿か!!」
「はい、照れない、照れない。」
「頭をなでるな!!子供ではない!!離せ!!」
そう言われるなりレオリオは突き飛ばされた。
「ったく……何でここのガキはこんなにも大人ぶっているんだ…?」
言いながらもその顔は笑顔で、その姿を見た相手は一層顔を赤らめた。
「もういい!!帰る!!」
「はいはい、気をつけて帰れよ。」
「うるさい!!」
逃げるかのように走るその姿はとても可愛らしく、面白く、思わずレオリオは笑ってしまった。
だから相手がぴたっと止まって振り返った時はビクリとした。
「レオリオ…………お前を………………私は…………」
その後の言葉はとても小さくてかすかに聞こえた程度だったが、ちゃんと聞こえた。怒られると思っていたが違った。かすかだったのにも関わらずその言葉は重く忘れる事が出来ないものになることは確実だった。
「やべぇ…帰り道わからないから、一緒に行こうと思ったのに………」
そう思っても相手はもうどこに行ったのかわからない。とりあえず同じ方向を行く事にした。
すると5分もしないうちに教会が見えた。よく考えてみるとここは教会の裏の丘だったのだ。丘にしては珍しく高い木が生えていたので教会が見えなかったのだ。方向音痴もいいとこだなとレオリオは心の中でそう思った。
「あっ!レオリオ――――――!!どこ行っていたの??」
「あ――――――!!忘れてた!!お前等〜…!!」
「何?忘れてた??痴呆症だな。」
「キルア―――――!!てめぇ……!!!」
忘れる事が出来ない言葉。
今思えばきちんと理由を聞いておけばよかったなんて、この頃レオリオは思いもしなかった。今はこの怪獣達のお相手で精一杯。
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