第七章 金融規制と信用秩序
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1:金融規制の根拠(信用秩序の維持と預金者の保護)
=信用秩序の維持=
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金融は全ての産業のインフラ的存在であり、金融業界が機能不全に陥ったときのほかの産業に与える悪影響が著しく大きいと予想される。さらに金融業界からの影響は市場を通したものではなく、経済学的にいう『外部不経済』に属すものでありより直接的である。金融業界が安定的にサービスを提供できなくなったときに他の産業や国民生活に及ぼすマイナスの影響は、金融機関にとっては内部化されて考慮されることのない外部効果である。それゆえ、金融規制は必要不可欠である。 |
=預金者保護と取り付け防止=
預金者とここの金融機関では『情報の非対称性』が生じる。⇒預金者はこれまでの信用、評判から金融機関を判断しているから何かのきっかけによってもろく崩れる恐れがある。
例えば、とある一金融機関の破綻でも全ての金融機関の信用が崩れるのである。大抵が部分準備で運営されている金融機関にとって信用を失って取り付け騒ぎが起こると破綻の危機である。
対応としては、回避するためには情報劣位者である預金者に代わって公的当局が金融機関に対する監視者としての役割を果たすことが有効である。こうした観点からは、金融機関に対する監督や規制といった形の公的介入は、公的当局が預金者に代理して債権保全のために行うものである。
=信用秩序維持政策=
| 維持政策として、事前的対策と事後的対策とがある。事前的対策は金融を取り巻く環境の悪化によって起こる少数の破綻の対策、そして事後的対策はその結果起こるであろうシステム全体に起こる混乱。 |
2:従来の金融規制
=事前的対策と金融の自由化=
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事前的対策は大きく分けて二つある。一つは健全経営規制であり、もう一つは競争制限的規制である。健全経営規制は破綻の可能性を低下させるような経営方針をとるように仕向けることを意図して、個別の金融機関の資産、負債間の関係に課される法制的、行政的制約の総称である。(例:自己資本比率規制)競争制限規制は競争制限によるカルテル的な利益提供を通じて、金融機関の収益を下支えする効果をもつと見られる措置を指している。収益の確保ができれば結果として金融機関の破綻の可能性は低下する。ただ、近年の国際化の進展と、情報技術の革新によって実質的な新規参入とカルテル破りの機会が拡大している。 |
=事後的措置〜セーフティネット〜=
| 例として中央銀行による『最後の貸し手』がある。発動の祭にはその経営困難状態が『流動性の不足』からなのか『支払い能力を失ったこと』からなのかを判断する必要がある。支払能力のない金融機関にまで『最後の貸し手』を発動させてしまうとモラルハザードが起こる可能性がある。しかし、支払能力を失った金融機関の預金者には最大で一人一金融機関あたり1000万円までの預金保険制度がある。⇒信用を基盤に成り立っている非常にデリケートな商売で、しかも市場に与える影響は計り知れないため、様々な方法で守られているのが実情である。 |
=護送船団行政=
| これまでは公的当局が直接介入して再建に力を入れてきた。その結果『銀行の不倒神話』が出来上がった。セーフティーネットによるモラルハザードが発生する。けれども今までは、破綻の結果失う『免許』に絶大な力があったため、モラルハザードが顕著にみられることはなかった。しかしこれからは金融自由化の進展において免許の価値が下落してしまう。 |
3:今後の金融規制
=自己資本比率規制=
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今後の事前的規制は『健全経営規制』に移行してゆくべきである。とりわけ『自己資本比率規制』が重要な役割を果たす。リスクを優先的に負担するため、金融機関が経営破たんに陥りる確立を低下させることができる。 |
=問題先送りコスト=
| 当局が問題を先送りしている間に、セーフティーネットをもつ金融機関は危険な状態にもかかわらず経営を続ける。失うものがないのだからこの経営はいわば『ギャンブル的な経営』となってしまう。モラルハザードの状態になってしまう。そして結果、状態を悪化させるだけになってしまった。ということが過去アメリカにあった。日本は同じようなことをしている。 |
=早期是正措置=
| 公的当局の権限を強化して、早期是正措置をとる。そして、そうした措置にもかかわらず悪化しつづけるようならば、その金融機関を閉鎖し、破綻処理の対象とする。96年の『金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律』など客観的なルールに基づく透明な事前的対策と事後的対策の組み合わせを実現することで『護送船団行政』や『銀行不倒神話』などに頼らなくても金融システムの安定性は保たれるはずである。しかもこうした信用秩序維持政策は金融システムの効率性を損なわないというところが優れている。 |