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世界の水資源事情

地球に存在する水の総量

 表4・16は、地球の水賦存量の割合を示したグラフである。

地球に存在する水の総量は、1,385,948,610km3(@)である。このうち、965%(A)にあたる1,338,000,000km3 (B)が海水である。

人間活動による水の利用用途を分類すると、農業用水・工業用水・生活用水の3つに分けられる。海水は、農業用水や生活用水として利用することはできない。実際、工業用水として海水を利用したり、海水を淡水化して利用している場合もあるが、その総量はきわめて少ない。結果として、人間が利用する水は、地球に存在する水のたった253%(C)を占める淡水に求められる。

地球に存在する淡水の大部分は、地下水(30.1%)や氷河および永久積雪中の水(68.7%)がほとんどであるため、実際に利用可能な水資源量はごくわずかであると考えられる。しかし、水は地球上を循環しており再利用が可能である。現在、世界の各大陸・各地域から河川を通り流出する水の平均量は、44,500km3と見積もられている。

 

世界の水使用量

 表4・22は、世界の大陸別・利域別の年流出量と水使用量の表である。

 1980年には、陸地全体のからの平均年流出量44,500km3 (@)のうち、7.46%に相当する3,320km3 (A)の水が利用されていた。

世界の水使用量は、2000年には5,190km3 (11.7%)に達し、1980年からの20年で1.5倍になっている。

特に水使用量が多いのがアジアである。2000年には、世界の水使用量の6割がアジア地域において利用されている。


世界の水使用量の変化

 図3-5-2は、世界の水使用量の経年変化を用途別にグラフにしたものである。

1940年代以降、水使用量が大幅に増加していることが分かる。特に、農業用水および工業用水の増加率は、1940年代に変化しており、これは、図1-1に示す世界人口の増加率が変化した時期と、時を同じくしている。

 このままの勢いで人口が増え続ければ、将来的には、大規模な水不足が起こると予想される。国連が1997年にまとめた「世界の淡水資源に関する包括的なアセスメント」によると、現在、地球上で極度の水不足に悩んでいる人の数は、世界人口の8%に当たる46000万人にも達し、世界の4人に1人が慢性的な水不足に苦しめられているとしている。これらの人々の多くは、アジア・アフリカの発展途上国の人々である。(国際水管理研究所による2025年の水不足予測では、アジア・アフリカの国々で極度の水不足が引き起こされるとしている。)

 

 

 

 

 

 

農業用水需要増加の問題点

 水使用量の内訳では、農業用水がもっとも高い割合を占めている。2000年においては、3,250km3の水が農業用水として用いられており、これは水使用量全体の62.6%を占めている。

 アジア地域において水使用量が多い理由は、人口が多いためでもあるが、農耕地の灌漑率が高いことも大きな要因である。1984年のデータであるが、耕地面積の灌漑率はアフリカと南米が7%前後、中・南米が10%、アジアが32%で他の地域に比べて高い。

 灌漑農業の問題点は、消費水量が多いことである。消費水とは、蒸発などにより海洋に復帰しない水のことである。現在アジアの消費水量は2,020km3であり、アジアの使用水量3,140km3の実に64.3%にも達する。今後、農業用水の増加に伴って消費水量が増加すれば、健全な水循環が損なわれ、利用可能な水資源(つまり流出量)が減少する可能性がある。


アフリカ北部とアジアにおける水不足の懸念

 水使用量を流出量で割ったものを水資源使用率とする。表422から、水資源使用率を計算するとそれぞれ、ヨーロッパ:21%、北アメリカ:9.7%、アフリカ:6.9%、アジア:21%、南アメリカ:1.8%、オーストラリアとオセアニア:2.0%となっている。ヨーロッパおよびアジアの水資源使用率は他の地域に比べて高く、21%になっている。既に、水資源使用率が高い水準に達している地域で、さらに高い水準を望むことは困難である。

ヨーロッパは1人あたりの利用可能水量が4.6m3/年と低いが、人口増加率もそれほど高くないため、今後水使用量は安定するものと予想される。それゆえ、ヨーロッパに関して、水資源問題を心配する必要はそれほどないと考えられる。

アフリカの水資源使用率は6.9%と比較的低い。しかし、アフリカにおいては、中央部および南部における流出量の占める割合が、アフリカ全体の71%と極めて高い。その他の地域の流出量は非常に少なく、特に、アフリカ北部における1人あたりの利用可能水量は0.69 m3/年と世界的に見てもきわめて低いことが分かる。2000年のアフリカ北部の水資源使用率は97%であり、これ以上河川水資源の開発は望めない。

 アジアにおいては、シベリアと極東および中国南東部の流出量が非常に多い。しかし、その他の地域の水資源は少ない。中国のうち南東部を除く地域では、水資源使用率が50%を越えている。中国の黄河では、川の流れが海に達する前に途絶えてしまう断流という現象が目立ってきている。1970年代には1年のうちに20日あるかないかであった断流の日数は、1992年には80日以上、1997年には120日、1998年には220日を越えたという1)。さらに、少なくなった河川水の代わりに、大量の地下水を利用下結果、至るところで地盤沈下が起きている。北京では、場所によっては地下水位が80mも下がっており、北京の土地は0.5m下がったという2)

世界人口が大幅に増加し、それに伴って増加する水需要に対応するためには、水資源使用率を上げるか、地下水など河川水以外の水資源を開発する必要がある。しかし、アフリカ北部やアジアでは、既に水資源使用率が非常に高くこれ以上の増加は望めない。さらに、中国のような地域では、地下水資源の開発も限界に近づいてきている。もし、これらの地域において、さらに人口が増加すれば、大規模な水不足が引き起こされるであろう。

 

 

(参考文献)

1) 井田徹治「データで検証 地球の資源ウソ・ホント」(講談社ブルーバックス) 2001

2) 中西準子「水の環境戦略」(岩波新書) 1994

レスター・R・ブラウン「地球白書1999-2000(ダイアモンド社) 1999

「地球環境工学ハンドブック」,

OECD環境委員会「OECD環境白書」(中央法規出版) 1994

井上堅太郎「新版 環境と社会」(大学教育出版) 2000

「水資源便覧」