かつて伝統芸術の職人が数多く働いていたフィレンツェのアルノ川対岸でも、いまやほとんど見られなくなった工房。 1887年、フィリッピ家が事業を起こし、1945年にはそこで20年働いていた職人、アルフォンゾ・ビーニによって受け継がれた。 73年、彼はデザイナーのマリオ・マリオッティとともに、製品のうち、いくつかの帽子の型がやや傾斜するかひっくり返っていると、その形、センスともに前衛的な彫刻の作品のように高く評価され、ちょうどよい、しかもオリジナルな小物入れになることに気がついた。
こうして始まった帽子型の制作は、現在も主要な活動でありまた非常に珍しいもの(ヨーロッパではパリ、デュセルドルフで同様の工房が見られるのみ)となっている。同じくちょっとした遊びの精神で創り出されたその他の作品とともに、今日イタリア国内の重要な店に置かれ、また米国、日本、ドイツに向けて輸出されている。
工房ではその後二人の息子ルチアーノとロベルト・ビーニが制作に加わり、1985年の父親の死後も、創業以来の技術を守って活動を続けている。
時代の流れと木製工芸の危機に耐えつづけた一つの芸術は、今、フィレンツェ伝統工芸の最も純粋な姿を証言し続けている。