Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!
『蕀の道』,戦前台湾詩人/王白淵著
**僅摘録数首代表作

もぐら
もぐもぐと土地掘るもぐら
お前の道は暗くて曲っている
併し地下に築くお前の天国は懐かしい
もぐらよ!お前は恵れ者だ
地上の虚偽もなければ生の倦怠もない
無上の光を見ん為に目は細く
企望の花園へ達せんが為にお前の道は暗い
不恰好な手は働くに十分であり
真黒な衣は暖をとるに十分であろう
子供も居れば愛人も居り
暗い隅こで思う存分愛の花も咲くではありませんか
地上の二足動物はお前を厭い迫害する
もぐらよ!笑って退けろ
こんな広い世界にお前を讃美する者が一人も居ないとは云えまいから
神の御国をも疑わず朝から晩迄
光への暗き道を辿るお前は
憎らしい迄に愛らしい
もぐらよ!お前の子供がキイキイ泣いている
早く乳をお呑せよ

未完成の画像
私が大きな声を張り上げて歌おうとする時文字が私の命を奉じない
創作の衝動に駈けられて画こうとする時絵具が私を失望させる
文字は一種の概念的な約束だ
絵具は不完全な表現の一形式に過ぎない
私は美の高嶺を駆け廻って
再び沈黙の幽谷に帰って来る
そして心の中に画かる
永久に未完成であろう画像を
じっと息を殺して横から眺めている


詩人
バラは黙って咲き
無言の儘で散って行く
詩人は人知れず生き
自分の美を食って死ぬ

蝉は中空で歌い
結果を顧みみずに飛び去る
詩人は心の中に詩を書き
書いてはまた消して行く

月は一人で歩み
夜の暗黒を照らす
詩人は孤独で歌い
萬人の胸を語る

違った存在の独立
思索の岩より岩へ滑べり行き
思いの波より波へと移り
次から次へと生の門を叩き
隙漏る光に吾を忘れ果てて
生の白紙に赤い血潮の一滴を落としたる時私の詩は始まります

蕀に満てる道を辿りつつ
あいの森を通り
生の砂漠を過ぎ
生命の河を泳いで
驚異の里に着いた時
私の詩は不思議にも黒色を呈して来ます

逆えざる水の流れに棹しつつ
悲しみも喜びをも沈黙の坩堝に溶かし
失望も勝利をも小鳥に譲り
生も死も草花に托して
思わず微笑を漏らしたる瞬間に
私の詩はシャボン玉のようにぱっと消えてしまいます

水のほとり
緑滴る相思樹の下蔭
清水湧き出づる泉のほとり
菖蒲のようにすっくりと
思をたっぷり含ませて
咲き出づる一輪の神の巧み
雨に打たれ風に吹かれしを
小さき胸にしのばせて
過去も未来をも現在に溶けしめて
さわ立つハートより流れ出づるままに
そよ吹く風の波を漂わせ
過ぎ行くタイムに春の薫を送れ


BACK